米国で半導体産業がクローズアップされています。バイデン大統領が22年8月に「CHIPS法」に署名し、成立したことが契機となっています。
CHIPS法は米国の半導体業界の強さを取り戻すための法律で、今後5年間で半導体メーカーなどに527億ドル(約7兆1000億円)を提供します。バイデン大統領は演説で「CHIPS法は、米国での半導体製造を目指す取組みを加速させるものだ。半導体を発明したのは米国で、この法律で(半導体を)取り戻す」と語ったそうです。
米調査機関によれば、1900年にプロセッサー(処理装置)で37%のシェアがありましたが、現在は12%まで低下しているそうです。また、新型コロナ感染症拡大により、供給網の寸断などで半導体チップが不足。これが自動車やゲーム、パソコンなどの生産に多大な影響を与えました。さらには、軍事関連製品にも不足感が出たもようです。海外に頼ることなく、自国で作ることで対応する狙いもあるものとみられます。
さらに半導体受託製造世界最大手のTSMCが22年12月に、米西部アリゾナ州に最先端半導体の工場を新設すると発表しました。生産するのは「3ナノ(ナノは10億分の1)メートル」と呼ぶ製品で、米国での総投資額は従来計画比3倍超の400億ドル(約5兆5000億円)に達するとのことです。半導体の線幅を細くすれば、例えばスマホにより多くの半導体を搭載することができます。同じ性能なら小型化できるため、微細化の進展が進んでいます。現在は5ナノが量産され始めたところであり、3ナノは最先端です。
当初、TSMCは自社の技術流出につながりかねない先端品は海外で作らないとみられてきました。巨額の補助金が得られると見られるほか、米中関係の対立や、中国の台湾への強硬路線などが、米国の悲願である先端品の生産に乗り出す要因になったとの見方があります。先端品の米での生産は、米国半導体関連企業への追い風になる可能性が高まることを意味します。
そこで今回は、半導体関連8社をご紹介します。
コンピュータ部品メーカー。マイクロプロセッサ、チップセット、マイコンなどに展開。アリゾナ州、オハイオ州などで半導体製造工場の新設や改修を手がけており、CHIPS法による支援は恩恵。微細化での巻き返しを狙う。
記憶を担当する半導体であるDRAMやフラッシュメモリーなどを開発・製造。12月に150億ドル(約2兆1000億円)を投じてオハイオ州の本社地区に新工場を建設すると発表した。データセンター向けなどの最先端メモリーを生産。
世界最大規模の半導体製造装置メーカー。シリコンウエハの回路を形成する工程(前工程)に強み。スパッタ(成膜)装置やCMP(研磨)装置なども手がける。半導体製造で不可欠な工程が多い。