「隠れコスト」は実際に運用した後に確定するコスト
投資信託を選ぶ際には、信託報酬などの運用コストを比較して、できるだけコストが低い商品を選択するという方もいらっしゃるでしょう。
投資信託の主なコストは下記の3つになります。
・販売手数料(購入時手数料)
・信託報酬(運用管理費用)
・信託財産留保額
※その他、投資信託によっては解約時手数料等が発生する場合があります。
これら3つのコストは事前に決まっており、重要事項を説明する「目論見書」に記載されています。また証券会社等の投資信託銘柄情報などにも記載されています。
実は、事前に決まっているこの3つのコストの他に、実際に運用した後に事後報告される「隠れコスト」もあります。
目論見書には「その他の費用・手数料」という項目があり、下記のような内訳が記載されています。
<その他の費用・手数料 例>
・監査法人に支払われるファンドの監査費用
・有価証券等の売買時に取引した証券会社等に支払われる手数料
・有価証券等を海外で保管する場合、海外の保管機関に支払われる費用 など
これらのコストは、実際に運用をしないと確定しないコストのため、「目論見書」には具体的な金額の記載がありません。金額を確認するためには、「運用報告書」を確認する必要があります。
隠れコストは運用報告書で確認する!
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)を例に、交付目論見書と運用報告書のそれぞれに記載されているコストの内容を確認してみましょう。
<eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の実質コスト>
目論見書だけを見ると信託報酬の約0.114%が運用中にかかるコストだと思ってしまいます。しかし、運用報告書に記載されているその他の費用を加味すると、実質コストとして0.178%が運用にかかっていたことが分かります。その差の約0.06%が「隠れコスト」です。
この「隠れコスト」が少額であれば、それほど運用に影響はないかもしれません。
しかし、投資信託によっては隠れコストが高いものもあり、信託報酬だけで判断をしてしまうと、実は思っていた以上に運用コストがかかっていたということもあるのです。
特に、海外資産の保有にかかる経費や、有価証券の取得にかかる税金が国内に比べて高い海外の株式や不動産を投資対象としたものは隠れコストが高くなりがちです。外貨建て資産の保管費用などは資産規模に関係なく一定額を支払う契約となっている場合があるため、総資産総額が少ない投資信託は費用負担の割合が高くなる傾向にあります。
また、株式の売りと買いを組み合わせて信用取引で頻繁に売買をするようなアクティブ型の投資信託は、売買委託手数料の負担が重く、「隠れコスト」が高くなっています。
長期に運用すればするほど、運用中に継続的にかかってくるコストの影響は大きくなります。
投資信託を選択する際には、目論見書だけではなく、運用報告書にも目を通し、これまでの実質コストの負担も確認しましょう。