米雇用統計はなぜ注目される?
米雇用統計とは、原則毎月第一金曜日にアメリカの労働省が発表する統計で、アメリカの雇用の傾向(就職・失業数や給料のアップダウンなど)を表し、景気の動向を見るうえでとても重要です。
いくつかの項目中で特に注目されるのが非農業部門就業者数と失業率です。
非農業部門就業者数は自営業、農業従事者を除き、事業所の給与支払い帳簿をもとに集計されています。
失業率は、失業者を労働力人口で割ったもので日本とほぼ同じです。
なぜ、アメリカの雇用に世界中の人々が注目をするのかというと、米雇用情勢の変化は、個人消費に波及し、今後の景気にも大きな影響を及ぼすからです。
また、アメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)が金融政策を決定する際に重要視しているのも雇用統計です。
金融政策=政策金利の上下に市場は非常に敏感です。
アメリカの金利の変動は株価やドル円の為替相場に大きな影響を与えます。
日本は輸出企業の割合が多いため、日本の株価も当然アメリカの金融政策の影響を受けることになります。
特に雇用統計の発表が米国時間の金曜の夜のため、週明けの日本株はその影響を受けやすいのです。
日本株への投資もタイミングに注意!
では、実際にどのように株価が動くのかというと、雇用統計の発表結果が良かったら上がる・悪かったら下がるということではなく、事前予測との差が重要になります。
投資家は株式への投資にあたり、雇用統計の事前予測を行い動きます。
そのため、統計が発表されたとき、予測から大きくずれていた場合に市場への影響が出やすいのです。
事前予測は、米国の大手給与計算代行会社であるオートマティック・データ・プロセッシング(ADP)という民間企業が、米雇用統計の2営業日前に発表するADP雇用統計がよく使われます。
この数字を参考に、金融機関所属のアナリストやエコノミストによる予測の中央値が市場予想として公表されます。
下の表は、市場予想と雇用統計の実数を表したものです。
2021年5月分 (6月発表)のADP雇用統計は、前月比97.8万人増と、ここ数カ月の中でもかなりの雇用の伸びを示していました。
そのため、市場予想も高い伸びを見込んでいました。
しかし、実際は市場予想の65万人増を下回る55.9万人増という結果にとどまったため、ドルが売られ、週明けの日本の株式相場は下落しました。
【ADP雇用統計と米雇用統計市場予想・結果】
雇用統計者数(前月比増) 単位:万人
2021年1月 | 2021年2月 | 2021年3月 | 2021年4月 | 2021年5月 | ||
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ADP雇用統計 | 結果 | 17.4 | 11.7 | 51.7 | 74.2 | 97.8 |
米雇用統計 (非農業部門雇用統計者数) |
市場予想 | 5 | 18.2 | 64.7 | 97.8 | 65 |
結果 | 4.9 | 37.9 | 91.6 | 26.6 | 55.9 |
筆者が作成
このように統計発表時は株価が動く傾向にあるため、ご自身で売買をするときは発表の日程を確認して投資のタイミングを避けるなどしても良いでしょう。
次回の日程は、米労働省のHPで確認できます。