日経平均が上がっても下がっても利益になる?日経225miniを買うときには日経平均VI先物も一緒に買ってみる! 日経平均が上がっても下がっても利益になる?日経225miniを買うときには日経平均VI先物も一緒に買ってみる!

日経平均が上がっても下がっても利益になる?日経225miniを買うときには日経平均VI先物も一緒に買ってみる!

1.はじめに

日経225先物(日経225mini)を買っては相場が下がり、売っては上がる、といつも逆にいっちゃうんだよなあと嘆いておられる方(曲がり屋さん)も多いと思いますが、かくいう私もその一人。なかなか相場の方向性を当てるのは難しいものです。今回と次回(最終回)にわたって、そういう日経225miniを取引する曲がり屋さんのために、日経平均が上がっても下がっても利益になる可能性のある、日経225miniに日経平均VI先物やオプションを組み合わせる方法をご紹介したいと思います。

2.日経平均と日経平均VI先物は逆相関

以前のコラムでも書きましたように、日経平均と日経平均VIはおおむね逆の動きをします(図表1)。

【図表1】 日経平均株価(黒)と日経平均VI(青・赤)2018年

【図表1】 日経平均株価(黒)と日経平均VI(青・赤)2018年

ヒストリカルデータより筆者作成

図表1を観察すると、日経平均が上昇する局面では日経平均VIが下がり、日経平均が下落すると日経平均VIは上がり、さらには日経平均が急落する局面では日経平均VIは急上昇していることがわかります。もっとも、日本取引所の説明にも「日経平均VIは、日経平均株価が急落する時に急上昇するという特徴があり、日経平均株価と通常は弱く逆相関する傾向があります」とあるように、日経平均が上昇しているのに逆にVIが上がってきたり、日経平均の緩やかな下落では、VIも下がったり、動きのない相場でVIが下がることもあれば上がることもあるといったように常に全く逆に動くということはありません(図表2参照)。ただ日経平均の急落時にはほぼ確実にVIも急上昇します(図表3)。

【図表2】

【図表2】

ヒストリカルデータより表計算ソフトを利用して筆者が作成

【図表3】

【図表3】

ヒストリカルデータより表計算ソフトを利用して筆者が作成

【図表4】

【図表4】

ヒストリカルデータより表計算ソフトを利用して筆者が作成

図表2は2019年における日経225miniと日経平均VI先物の騰落率の散布図です。右方向が日経平均の上昇、左方向が下落です。上下方向(縦軸)は日経平均VI先物の騰落率です。ゆるやかな逆相関であることが見て取れます。しかし、図表3をみるとわかるように、日経平均が大きく下落する場面では、日経平均VI先物は約4倍上昇しています。さらに、図表4は日経平均VI先物が17ポイント以下であった場合に限ったものですが、日経平均の下落率の平均は-0.67%に対し日経平均VI先物の上昇率の平均は+2.15%(日経平均騰落率の約3.2倍)、一方で日経平均が上昇した場合の上昇率平均+0.61%に対し日経平均VI先物の下落率平均は-1.13%(日経平均騰落率の約1.8倍)といったように、たしかに日経平均と日経平均VI先物は逆に動くけれども、日経平均が上がるとき、日経平均VI先物は下がりにくく、日経平均が下がるときには日経平均VI先物はしっかり上がるという特徴を見て取れます。つまり日経平均のヘッジとして優れた機能を持つということです。特に日経平均VI先物の値が低いとき、その傾向が顕著に表れるのです。

3.日経平均の上昇で下がりにくく、日経平均の下落で上がりやすい日経平均VI先物を日経225mini買いのヘッジに用いる

日経平均VI先物が低位にあるときは、下値が限られているということもあり下がりにくく、また日経平均VI先物が低いときは、日経平均の上昇トレンドにあるときであることが多いため、そこからの急落はびっくりしてオプションのインプライドボラティリティの上昇を伴いますので、その結果日経平均VI先物も大きく上がります。この特徴を生かして、日経平均VI先物が相対的に低位にあるときに、日経225miniを買って日経平均VI先物を買えば、そのまま日経平均が上昇した場合は日経225miniが利益になるのに対して日経平均VIが多少の損失になるものの下げ止まりし、ヘッジ(保険)の役割のはずの日経平均VI先物がたいしてコストにならない(減価しない)可能性があり、またむしろ高値警戒感から日経平均VI先物が上がる場合すらある可能性があります。日経225miniが下げれば、逆に日経平均VI先物が上がって、日経225miniの損失を日経平均VI先物の利益でカバーできる可能性があるというわけです。
問題は、日経225mini1枚に対して、日経平均VI先物を何枚買えばよいのかということです。
日経225miniは1枚あたり現在価格の100倍で取引されますので、30,000円で買った場合、時価総額は3,000,000円の取引だということになります。一方日経平均VI先物は1枚当たり10,000倍で取引されるルールですから20ポイントで買うというとき、時価総額は200,000円ということになります。先に検討したように、日経平均VI先物が低位にあることが条件ではありますが、日経平均VI先物は日経平均の上昇時約-2倍、下落時約+3倍、大暴落時約+4倍動くと仮定すると、①通常の下落時にプラスマイナスゼロになるようにする(日経平均の上昇で利益を出す)、と考えるか、②通常の上昇にプラスマイナスゼロになるようにする(日経平均の下落で利益を出す)、と考えるかで、時価総額ベースで何対何にすればよいかが変わってきます。
先の例で日経225miniが30,000円、日経平均VI先物が20ポイント(=2021年2月時点で直近2ヶ月の数値において相対的に低位と考えられます)とすると、①の考え方であれば、日経平均の下落時、日経平均VI先物は3倍動きますので、日経225miniの時価総額の約33%、すなわち日経平均VI先物は時価総額で990,000円分≒5枚程度を買うということになります。例えば、日経平均の1%の下落の場合、日経225mini買い1枚から30,000円の利益、日経平均VI先物の損失は変動率が-2%ということで20,000円、よって計算上は差し引き1万円の利益が出る可能性があります。一方、日経平均が1%下落した場合、日経225miniから30,000円の損失、日経平均VI先物からは+3%、すなわち30,000円の利益となり、差し引きプラスマイナスゼロで行ける可能性があるというわけです。もし日経平均が3%程度の下落に見舞われた場合、日経225miniから90,000円の損失となりますが、日経平均VI先物が+4倍の12%上昇するとすれば、日経平均VI先物からの利益は想定上120,000円ということになり、差し引き30,000円の利益となる可能性が計算上はあることになります。
一方②の考え方ですと、日経平均の上昇時は、日経平均VIは-2倍になりますので、日経225miniの時価総額の50%、すなわち日経平均VI先物は時価総額で1,500,000円、枚数にして7枚~8枚です。日経平均が1%上昇した場合、日経225miniからは30,000円の利益ですが、日経平均VI先物は2%の損失、すなわち30,000円の損失となり、差し引きプラスマイナスゼロということになります。日経平均が1%下落した場合は、日経225miniからは30,000円の損失となりますが、日経平均VI先物は3%上昇しますので45,000円の利益、計算上は差し引き15,000円の利益となる可能性があります。日経平均の3%の大きな下落では、日経225miniからは90,000円の損失が出ますが、日経平均VI先物からは想定上+12%の180,000円の利益が出る可能性がありますので、計算上は、差し引き90,000円の利益が出る可能性があるというわけです。
もう1つ問題があります。いつ入るか、日経平均VI先物が低位とは何ポイントなのかです。
上記の枚数計算は図表4の比較的相場が安定していた2019年のデータを基に行っています。ここでは日経平均VI先物の値として17ポイントを割っていることを条件としました。2020年~2021年にかけては20ポイントを割ることはほとんどありませんでしたので、17ポイントまで待っていたとしてもチャンスはなかったことになります。
そこで、次のように考えてみることにします。
日経225miniが目先つけたレンジの上限は、日経平均VI先物側では同様に形成しているレンジ下限に近い可能性が高いため、このタイミングでエントリーを考えます。日経平均VI先物が自身のレンジ下限に近い方が望ましいですが、日経平均VI先物は第2限月の時期の流動性の問題からレンジを認識しにくいので、レンジの確認上は指数(日経平均VI指数)の方を参照し、そのレンジ下限付近(このあたりは自分のルールですのでざっくり行くほかありません)にあれば、日経225miniを買い、同時に日経平均VI先物を買います。枚数バランスについては日経平均VI先物の下落の可能性も高く、流動性や必要資金量等を考慮して枚数の少なくてすむ上記①の考え方(上昇で利益、下落はトントン、大幅下落は利益となるバランス)を採用して、日経225mini買い1枚の時価総額の約3分の1程度の時価総額になるように日経平均VI先物の枚数を決定するという方法で最近の相場に当てはめてみましょう。

<日経225mini買い+日経平均VI先物戦略案

  • 1. エントリータイミング
    1. ① 平時(日経平均VI指数が20以下のとき)は17ポイントあたりまで引き付ける
    2. ② 相場が不安定のとき(日経平均VI指数が20を超えているとき)は日経225miniのレンジ上限にあり、日経平均VI指数がそのレンジ下限付近にあるとき
  • 2. 日経225mini1枚買いの時価総額(日経225miniの値×100)の約3分の1になるような枚数の日経平均VI先物を買う(2021年2月時点であれば日経225mini1枚に対し日経平均VI先物4~5枚程度~なお、日経平均VI先物の満期が近づくにつれ、相場への感応度が高まる可能性があるので、満期までの残存日数次第では、枚数を調整する必要があります。詳しくは前回のコラムを参照ください)
  • ※日経225mini1枚に対し、日経平均VI先物を何枚当てればいいかは明確な指標がありません。日次騰落率の標準偏差を比較して枚数比率を検討するなどの方法も考えられますが、いずれにせよ実証的、帰納的に検討することにならざるを得ないため、異なる場面ではまた違う結果となる場合もあります。上記はあくまで、2019年という比較的安定的な相場環境において、その期間内において日経平均VI先物の値が相対的に低位にあった場合のデータを基に推論したものであり、一つのアイデアにすぎません。当該戦略の採用の可否や、その戦略をとった場合に日経225miniのヘッジとして機能する日経平均VI先物の枚数、エントリータイミング等をどうするのかについては読者の皆様におかれまして、ご自身の責任において投資判断を行っていただく必要があることをご留意願います。
  • ※本戦略案及びその中で説明している数値やタイミングについては、日経225先物、日経225mini、日経平均VI先物を取引する場合の一つのアイデアを提供するものにすぎず、その優位性や利益を保証するものではありません。商品の特性、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分にご理解いただいたうえで、ご自身の投資判断と責任で取引いただくようお願いします。

4.2021年1月~2月に当てはめてみると

2021年1月14日、15日に一旦上値を抑えられましたので、この28,800円あたりを一応のレンジ上限とします(図表5①)。一度押したあと1月20日(②)には再度この水準をチャレンジしましたので、日経平均VI指数を確認し、目先のレンジ下限にあればエントリーするかを判断します。ここで図表6をご覧ください。日経平均VI指数は①のあたりでつけた20.5~21ポイントあたりを目先の下限とすると、②の時点ではまだレンジ下限には来ていません。その後日経225miniが28,800円を再度チャレンジした際(③、③‘)、その時、日経平均VI指数は21ポイント付近に降りてきましたので、1月25日(③’)にエントリーすることにします。

【図表5】

【図表5】

ヒストリカルデータより表計算ソフトを利用して筆者が作成

【図表6】

【図表6】

ヒストリカルデータより表計算ソフトを利用して筆者が作成

【図表7】

【図表7】

ヒストリカルデータより表計算ソフトを利用して筆者が作成

1月25日(③‘)の日経225miniの終値は28,800円、日経平均VI先物の終値は21.25ポイントでした。日経225mini買い1枚の時価総額は2,880,000円、この33%(約95万円)に対応する日経平均VI先物は4.5枚となりますので、ここでは4枚買うことにしましょう(今回は流動性も考慮して端数は切り捨てました)。
1月29日にかけて27,580円まで下げました。日経225miniは1,220円の下落で122,000円の損失となっています。一方、日経平均VI先物は21.25ポイントから28.35ポイントまで7.1ポイント上昇しました。4枚買っていますので284,000円の利益ということになります。日経平均が数日で4%を超える大幅下落となったため、日経平均VI先物が吹きあがり大きく利益となっています。差し引き利益は162,000円です。

日経225mini買い1枚  :28,800円⇒27,580円 ‐122,000円

日経平均VI先物買い4枚:21.25ポイント⇒28.35ポイント +284,000円  合計+162,000円

さて、下げ止まった日経平均は再度上昇に転じ、2月5日にレンジ上限の28,800円を再度チャレンジする展開になりました(図表5④)。このとき日経平均VI指数も、そのレンジ下限にあります(図表6④)。一気に30,000円をうかがう展開を期待し、ここでエントリーすることにしましょう。なお、日経平均VI先物第1限月(ここでは2021年2月限)の最終取引日が2021年2月9日(火)であることに注意しておく必要があります。
さて、2月5日の終値ですが、日経225miniはレンジ上限を意識していた28,800円、日経平均VI先物はレンジ下限よりやや上の22.05ポイントでした。日経225mini買い1枚の時価総額に対して33%分の日経平均VI先物は4.4枚となりますので、今回も4枚買うことにしましょう。
日経平均は大きく上昇、30,000円をうかがう展開でしたが、ちょっと届かず、2月9日の終値は29,520円ということで、日経225miniは720円の上昇、72,000円の利益となりました。一方日経平均VI先物は、日経平均の上昇にも関わらず、下げずにむしろ上昇しました。上昇が急な場合や高値警戒感が強くなってくると日経平均VI先物が下げ渋る場合があるということです。高値を追う展開で日経平均VI先物はヘッジ機能を有しながら、その価格も上昇する場合があり、コストにならない可能性があるというなかなか効率の良いヘッジ商品なのですね。さて、下げ渋った日経平均VI先物は2月9日22.55ポイントで引けています。0.5ポイントの上昇ですのでこちらも20,000円の利益となっています。日経225miniの利益とあわせて92,000円の利益です。

日経225mini買い1枚  :28,800円⇒29,520円 +72,000円

日経平均VI先物買い4枚:22.05ポイント⇒22.55ポイント +20,000円  合計+92,000円

  • ※上記結果については、シミュレーション上のものであり、確実にそのような結果が出たことを示すものではありません。また、相場状況によっては損失となる可能性も十分にあり得ます。当該シミュレーション結果が本戦略の優位性や利益を保証するものではありません。商品の特性、取引の仕組み、リスクの存在、手数料等を十分にご理解いただいたうえで、ご自身の投資判断と責任で取引いただくようお願いします。

このように日経平均VI先物は日経225miniのロングポジションに対するヘッジとして機能しながらも、コストにならない場合(逆に日経平均VI先物の損失が大きくなる場合も当然にありえます)があるほか、大暴落ではむしろ大きな利益を提供してくれる可能性のある、なかなか面白い商品なのです。まだまだ取引できる証券会社が限られており(auカブコム証券で取引できます)流動性が小さいですが、米国ではVIXとして大変活発に取引されていますので、日本版VIXたる日経平均VIも今後に期待できると思います。
さて、日経225先物や225miniを取引する際に、ヘッジとして日経平均VI先物を利用するというお話でしたが、次回は、日経225先物や日経225miniにオプションを絡めた戦略のお話をしたいと思います。お楽しみに!

【注意事項】

  • ※解説においては、筆者の独自の視点で学習目的のために事例を簡略化する場合があるため、資料の中で紹介される事例は実際の相場とは異なる場合があります。取引事例についても、完全に再現しているものではなく、かつ、その有効性を担保するものではありません。
  • ※先物・オプション取引においては、株式相場、為替相場の変動等によって損失が生じるおそれがあり、差し入れた証拠金の全部若しくは一部を失う、または、差し入れた証拠金を超える損失を被ることがあります。相場変動等により証拠金額に不足が生じた場合には、追加の差し入れが必要となります。
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執筆者:守屋史章

執筆者:守屋史章


株式会社M&F Asset Architect(オプショントレード普及協会)代表取締役。
宮崎県出身。慶應義塾大学法学部法律学科卒、同法学研究科修士課程修了。
個人投資家として企業数社に投資し、ビジネスオーナーを務める傍ら、証券などへの投資をも手掛ける。
投資における「オプション取引」を普及させることを目的にオプショントレード普及協会を設立。短期トレーディングから長期運用まで幅広い投資ニーズをかなえる資産運用を研究している。実際の投資経験を基に、個人投資家目線だからこその目からウロコの独創的アイデアと分かりやすい解説で「オプション取引の必要性」を提唱し、資産運用を始めたい方へのバックアップや資産運用教育セミナー等を定期的に開催し、手厚いサポートと実直さで幅広い層から支持を得ている。

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