今回はリスク選好度の低い女性のお客さまへ、どのように老後資金を準備するかをご提案した際の相談事例をもとにお話しいたします。
今回のお客様は吉村が担当し田中と一緒に相談をしながらご提案させていただきました。
バリューアドバイザーズでは1人のお客様のご相談事に対して様々な観点からより良い提案方法を導き出すため、チームコンサルティングを行っております。
本連載のお客様相談事例では吉村と田中でチームコンサルティングをした事例について挙げさせていただきます。
お客さまの状況と相談内容
お客様=A様
◎女性
◎45歳
◎離婚をされており現在はシングル
◎お子さまなし
◎約2,000万円の金融資産
◎高金利通貨で資産の一部を運用
ご相談内容
◎セカンドライフは仕事をせず悠々自適に過ごしたい。(最低35万円/月程度の支出を想定)
◎お金に悩みたくない。
◎銀行金利が低いので高金利で運用したい。
ご相談のきっかけは、老後資金2,000万円問題が世間で話題になったことです。
お仕事をされるのがあまり好きではなく、定年退職後のセカンドライフは働きたくないというご意向でした。
貯蓄体質であったため、現在の金融資産は保険を除き2,000万円ほどです。
現在の支出から鑑みて、老後最低35万円ほどの生活をしたいというご意向でした。
シミュレーションを行ったところ年金支給額見込は15万円/月程度でした。
差額の20万円程度を金融資産から拠出する必要があります。
60歳からの数年間は定率4%で取崩しをする場合、60歳時点では約6,000万円の金融資産が必要であると試算されました。
A様ご自身は定職に就き、比較的高い年収を得ています。
ご実家が近くにあるため万が一の際には戻ることも可能ということあり、属性から考慮するリスク許容度は比較的高いといえる状態でした。
一方でこれまで投資の経験がなかったため、ご自身のリスク選好度は高くありませんでした。
また、日経平均株価がバブル時最高値の38,915円を31年以上下回ってしまっていることからも投資に懐疑的な状況でした。
以上の点から、下落相場でも投資を継続しやすい積立投資を活用してポートフォリオを作成いたしました。
積立投資の有効性については次の段落でご説明します。
積立投資の有効性
図1
図1はリーマンショック前の高値圏で一括投資を行った場合と、同じタイミングで積立投資を開始した場合の投資成績のシミュレーションです。
一括投資の場合、5年経っても投資額300万円に対し運用残高は219万円となります。
年率換算のリターンは約-6%と低迷しています。(青の線)
一方5年間、月5万円の積立投資を行った場合(投資金額は同じく300万円)、約2年経過時点で一旦損益がプラスに転じます。
そして最終的な損益は約+56万円、年率換算で約+3%の運用効果になりました。
このような運用結果になるのは、運用成果は【価格×数量】で表せるためです。
一括投資の場合、数量は最初の購入時に固定されてしまいます。
一括投資で保有商品が値下がりした場合
価格:下落
数量:一定
一方積立投資の場合、定期的に買付行います。
価格が下落した場合には買付ける数量が増加するため、最終的に保有する数量も増加します。
積立投資で保有商品が値下がりした場合
価格:下落
数量:増加
セールのように価格が安くなればなるほど、購入できる数量が増えていきます。
その結果、図1の場合では5年前より価格が安い投資対象に投資した場合でも、収益を得ることが可能になりました。
A様へのご提案
A様の場合、リスク選好度が高くないため、下記の通り下落時にも運用成果を期待できる積立投資を活用しました。
◎ゴール
60歳までに6,000万円の金融資産
◎目標
平均年率4%の投資リターン
◎ポートフォリオ(資産配分)
1,000万円を株:債券=59:31の比率で配分
◎積立投資
毎月78,000円(内訳:iDeCo月23,000円/積立NISA33,000円/特定口座22,000円)
積立投資に関しては20年間で合計5,000万円の金融資産を作ることを目標に年率4%の期待リターンを設定しました。
また、節税効果の期待できるiDeCoやNISAを積極採用いたしました。
一括投資を組み合わせた理由については次回の記事でご紹介いたします。
現役アドバイザーが答えるお金の相談室
いまさら聞けない分散投資とは?
田中久登 Hisato Tanaka
株式会社バリューアドバイザーズ 執行役員 相続診断士
証券会社に入社後、大阪の富裕層地域にて資産運用コンサルタントに従事(当時担当40億円)。
常時トップ5の社内表彰を獲得し海外研修メンバーとして選出。
帰国後に日本の金融ビジネスが欧米と大きく異なることに疑問を感じていた折、現代表取締役の五十嵐と出会い株式会社バリューアドバイザーズ設立に参画。
中立にアドバイスを行う欧米の姿勢を学ぶため、2017年米国、2019年欧州を視察しお客様サービス向上に努めている。