鈴木一之の「HOTな銘柄、COOLな銘柄」2020年12月号 鈴木一之の「HOTな銘柄、COOLな銘柄」2020年12月号

鈴木一之の「HOTな銘柄、COOLな銘柄」2020年12月号

株式アナリストの鈴木一之です。 11月の「HOTな銘柄、COOLな銘柄」をお届けします。 いつものように相場の全体観から見てゆきます。

11月相場の振り返り

2020年11月の株式市場は大幅な上昇となりました。

日経平均は、10月末の22,977円(小数点以下は省略)から11月末には26,433円まで値上がりして、上昇幅は+3,456円に達しました。上昇率では+15.0%になります。
月間の上昇幅では歴代第3位の記録となります。

日経平均株価歴代騰落幅)

同じようにTOPIXは、10月末の1,579pから11月末は1,754pまで上昇しました。
上昇幅は+175pに達し、上昇率は+11.1%となりました。
日経平均と比較してTOPIXの上昇は少し小さなものにとどまっています。
「日経平均」の構成上の特殊さが少し強まっていると受け止められます。

日経平均、TOPIX

週足12/14まで表示

同じ期間の米国市場では、NYダウ工業株とNASDAQがそろって史上最高値を更新しています。
上昇率はいずれも+11.8%を記録しており、ほぼTOPIXと同じくらいの値上がりとなりました。

インドのSENSEX指数、ブラジルのボベスパ指数、台湾の加権指数、韓国のKOSPI指数が史上最高値を更新し、ドイツのDAX指数もそれに迫っています。

春先からコロナウイルスの感染拡大で翻弄され続けた世界経済が、11月にはワクチンの開発成功が近づいているという朗報に期待を寄せて、世界中でリスクオンの状態が強まりました。
それが11月相場の最大の特徴と言えるでしょう。

 

株高の要因としては、次の3点が挙げられます。

(1)米国の大統領選挙の投票が行われたこと
(2)コロナウイルスのワクチン開発で大きな進展があったこと
(3)バイデン・大統領候補の閣僚人事の顔ぶれがほぼ固まったこと

以下にそれぞれについて見てゆきます。

(1)米国の大統領選挙の投票が行われたこと

11月3日(火)に米国で大統領選挙の投票が行われました。

現職が圧倒的に有利とされる大統領選挙において、トランプ大統領は人種問題に関して国論を2分するほどの論議を引き起こし、それによって投票直前に支持率が急速に低下しました。

合わせて独裁的な為政者にありがちですが、コロナウイルスの感染拡大を軽視して対策が後手に回ってしまったことから、投票日の直前は民主党のジョー・バイデン候補が優勢で選挙戦が進められました。

ただ今回の選挙に関しては、単純にどちらかの政党の勝利だけでは済まない状況です。
熱狂的なトランプ支持者にとって、仮に不本意な投票結果になるようであれば、全米各地で暴動を起こすと噂され、選挙結果がどちらかに確定するまではマーケットの方向性は誰にもわからないと一部では指摘されていました。

トランプ大統領自身も、自陣に不利な結果が出るようであれば、各州で訴訟を起こして投票結果の確定を遅らせ、年明けに議会での投票で大統領を決める作戦を取る、などと不穏なムードがマーケットには流れていました。

それが実際にふたを開けてみれば、バイデン候補がフロリダ州を除く激戦州のほとんどで勝利を収め、選挙人の過半数を確保してほぼ勝利を確定的なものにしてしまいました。
本来であればここで選挙は終了しますが、しかし12月になってもトランプ大統領は敗北宣言を行わず、この稿を記している現時点でも選挙結果は厳密には確定していません。

それでも株式市場は、11月3日の投票日の当日から(実際には前日から)プラス方向に大きく反応しました。

11月3日(火)のNYダウ工業株は+554ドルの上昇。
日本では「文化の日」の祝日が明けた11月4日(水)に、日経平均株価は+400円の上昇を記録しました。
日経平均は投票日をはさんで8日間も続伸したのです。

バイデン候補が当選すれば、それは株式の下げ要因になるという見方が事前の予想では支配的でした。
富裕層への増税、大手テクノロジー企業に対する規制強化、国民皆保険の復活、製薬メーカーへの価格引き下げ圧力、「大きな政府」による財政赤字の拡大、など。

民主党政権が実現すれば、それは株式市場には厳しい結果が待っているという見方が多かったように思います。
しかし実際には、株価は投票終了の直後から大きく上昇するというルートをたどりました。

それは「トリプル・ブルー」、ホワイトハウスと議会の上・下院のすべてで民主党(シンボルカラーはブルー)が勝利する、という民主党の圧勝が食い止められたためです。

バイデン陣営は予想されたほどには強力な勝利者ではない、という状況が生まれ、それが株式市場と債券市場ではかえって好感される結果となりました。

現実には、激戦のジョージア州の上院選が年明けの決選投票にもつれ込み、こちらもまだ明確な結論は確定していません。
結果次第では「トリプル・ブルー」が実現する可能性もまだ残されています。
しかし株式市場は「いいとこどり」と称されるほど、物事のプラス面ばかりを見て上昇を続けているように受け止められているのも事実です。

(2)コロナウイルスのワクチン開発で大きな進展があったこと

11月相場の上昇は、大統領選の投票が終了したという大きなきっかけがありましたが、それ以上に重要なのが、コロナウイルスのワクチン開発に関するニュースが相次いだことです。

これによって人類はコロナウイルスに対抗する武器をひとつ手にすることになります。
コロナ対策としての外出自粛、小売店・飲食店の営業自粛、海外への渡航禁止、などによる経済停滞からいずれは脱け出すトンネルの先の希望が見えつつあり、株式市場はこれを好感して上昇を続けました。

11月9日(月)にドイツのビオンテックと米ファイザーが開発しているワクチンで90%の有効性が確認されたことが発表されました。

11月16日(月)には米モデルナが開発中のワクチンで95%の有効性が確認され、11月23日(月)には英オックスフォード大学とアストラゼネカが開発するワクチンでも同様の結果が得られたと公表されました。

この間、世界中で感染者が7,000万人まで大幅に増加しました。
死亡者数も150万人を超えています。
イギリス、フランス、ドイツが相次いで部分的な都市封鎖(ロックダウン)を発動し、米国でもカリフォルニア州はや夜間の外出禁止令を出しました。明らかに北半球は感染拡大の第3波を迎えています。

春の第1波ではウイルス封じ込めの優等生とされたドイツで、医療ひっ迫の事態に直面しています。
状況は日に日に深刻さを増しており、コロナ危機は着実に世界経済を追いつめています。

日本も例外ではなく、東京都は11月25日(水)に飲食店に対して営業時間の短縮を要請しました。
日本政府は「GoToトラベル」キャンペーンを撤回せずに継続したままでいましたが、北海道、大阪、愛知など大都市で感染者が急拡大する事態に至り、12月半ばについに方針を見直してキャンペーンの一時停止を指示しました。

菅政権の支持率は急低下しており、年明け1月の解散総選挙は見送られることとなりました。

(3)バイデン大統領候補の閣僚人事の顔ぶれがほぼ固まったこと。

大統領選挙の結果が正式に確定するには、全米から選ばれた選挙人による投票が行われ、その結果が確定しなければなりません。
それは年明け1月6日の連邦議会・上下院合同会議での、選挙人投票の結果開票を待つことになります。

そうして晴れて1月20日に次期大統領の就任式を迎えます。

その日程を待つことはせずに、バイデン陣営の政権移行チームは着々と活動を始めています。
主要閣僚人事の構想が徐々に明らかになりました。

11月25日(水)、注目の財務長官にジャネット・イエレン、前FRB議長が就任すると報じられました。
民主党の大統領候補者に名乗りを上げた左派のエリザベス・ウォーレン氏が下馬評では挙がっていただけに、イエレン氏の登場によって株式市場のみならず、金融市場全体に安心感が広がりました。

イエレン氏であれば、財政規律を守った上でウォール街の意向もある程度は斟酌した政策を実行してくれるという期待が広がっています。

同時に国務長官にはアントニー・ブリンソン氏が就任することになる見通しです。
ブリンケン氏は、副大統領時代のバイデン氏の補佐官(国家安全保障担当)だったことから信頼感は抜群と見られます。
下馬評では強面のスーザン・ライス氏の名前が挙がっていたために、最優先課題である中国との外交問題もトランプ政権とは違った安心感が期待されます。

以上のような3つの要因が重なって、11月の株式市場では「世界同時株高」と言ってもよい状況が生まれました。
コロナ危機でもたらされた「財政拡張、金融緩和」が継続しつつ、ワクチンの開発も進むという、まさに「いいとこどり」と指摘されるほどの明るい話題が11月の株式市場を取り巻いていたように感じます。

株価は生き物です。
いずれどこかで調整局面が訪れるはずです。
それでも全体観よりも東証1部の個々の株価の動きを見ている限りでは、これまで押さえつけられていた頭上の重石がとれて、自由にのびのび動き始めた、という印象を強く感じます。

これまでに何度も指摘されてきた、機関投資家の巨大な待機資金が動き出している感触も伝わってきます。

2020年は非常に厳しい1年となってしまい、とても楽観が許される状況ではありませんが、とにかく11月はどこか吹っ切れたように、歴史的な上昇相場があったというのが目の前に置かれた現実でもあります。

「HOTな銘柄」

続いて「HOTな銘柄」です。
11月相場で上昇した銘柄の特徴は、物色対象が非常に多岐にわたって広がったという点です。

このことは日経平均やTOPIXなど、株価指数そのものが大きく上昇したことによって、個々の銘柄にも上値余地が拡大したためと考えられます。

その中でもテーマとして幅広い投資家層から人気を集めたのが、環境関連株です。

イーレックス(9517)が東証1部の月間騰落率で第7位(+68.5%)の大幅な上昇を遂げました。
太陽光発電や風力発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギーによる発電事業者として人気化しました。

同じように、レノバ(9519、第14位で+55.7%)、エフオン(9514、第17位で+50.3%)もそれに続きました。

9517,9519,9514

週足12/14まで表示

10月26日(月)に召集された臨時国会で、菅首相は就任して初めての所信表明演説を行いました。
その中で真っ先に取り組む重点政策として「新型コロナウィルスへの対策」と「デジタル社会の実現」に続いて、「グリーン社会の実現」を掲げ、環境政策を前面に打ち出す姿勢を明らかにしました。

持論である地方創生や、安倍政権で重視された外交・安保よりも、地球環境対策を重視するスタンスを打ち出したのはこれが初めてです。
マーケットはその変化に敏感に反応し、そこから1か月以上にわたって環境関連株が次々と物色されてゆきました。

具体的な目標は、「2050年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにする」というものです。
コロナウイルスの感染者数は増える一方ですが、臨時国会を起点として「脱炭素社会」、「カーボン・ニュートラル」のトレンドが一気に形成されたような感もあります。

米国でもバイデン大統領が正式に就任すれば、2兆ドルに及ぶ環境投資を実施すると公約に掲げており、それも追い風になっています。

経済産業省や東京都は、それぞれ別個に「2030年にガソリン車の新車販売をゼロにする」という目標を打ち出しました。
自動車業界や素材メーカーを巻き込んで、物色の輪が一段と広がりを見せています。

11月の値上がり率の第6位にはモリテックスチール(5986、+70.6%)が登場しました。
自動車業界向けの特殊帯鋼を専門とする鋼材商社ですが、同時に電気自動車(EV)向けの急速充電スタンドも開発しています。

順位は少し下がりますが、同じく値上がり率の第47位には正興電機製作所(6653)が入っています。本社が福岡市にあり、電力業界向けの変電設備や開閉装置を得意としています。

それらとともに蓄電池を備えた家庭向けのパワーコンディショナー「ENEPAC」を製品化しており、これも再生可能エネルギー関連株として人気を呼んでいます。

この稿を記している12月半ばも、環境関連銘柄に対する物色の人気は少しも衰えていません。むしろ対象を拡大しながらますます銘柄は広がっているようです。

古河電池(6937)も上昇率の第9位(+58.50%)となりました。
社名に「~電池」と入っており、同社は自動車向けの鉛蓄電池を製造しています。
話題を集めているEV向けのリチウムイオン電池や全個体電池ではありません。

しかしちょうどこのタイミングで、宇宙から地球に6年ぶりに帰還した「はやぶさ2」に古河電池製のリチウムイオン電池が搭載されており、環境関連株というジャンルよりも、はやぶさ関連株としてより広く人気を集めました。

投資テーマとしてはもうひとつ、半導体関連株です。
こちらも小型株を中心に根強い人気を持続しています。
11月相場は、3月決算企業の決算発表の終盤戦と重なっています。好業績を発表した銘柄が素直に上昇する地合いが見られました。

TOWA(6315、第16位、+51.2%)は、半導体製造に関わる後工程で欠かせないモールディング、切断加工技術を得意としています。
11月9日に発表した2021年3月期Q2の決算で、営業利益が10億円へと黒字転換を果たしたことから、そこから株価は大きく上昇しました。

5986,6653,6937,6315

週足12/14まで表示

順位は少し下がりますが、同じく半導体・LED向け薄膜成型のサムコ(6387、第52位、+37.2%)、リードフレームの三井ハイテック(6966、第56位、+35.9%)も小型の半導体関連株として存在感を示しました。

半導体の大手企業では、シリコンウエハーのSUMCO(3436、第70位、+33.3%)や製造装置の東京エレクトロン(8035、第114位、+27.1%)もかなりの上昇を遂げました。

6387,6966,3436,8035

週足12/14まで表示

コロナ危機で企業業績が大きく落ち込むところが多いためか、業績の好調な銘柄はセクターを横断して幅広く物色されています。

ヤーマン(6630、第13位、+57.0%)は巣ごもり消費で家庭用の美容機器、健康機器が大ヒットしています。
11月11日は中国の「独身の日」のセールで、この日はネットショップ最大手のアリババだけで7兆円の売上げを記録しました。

その「独身の日」にヤーマンの美顔器が5年連続で第1位の売上げを記録し、もとから業績は好調な企業ですが、それが株価の一段の上昇を牽引しました。

10月30日にQ2の決算を発表したワコム(6727、第38位、+41.0%)は、売上高が前年比+17.9%の553億円、営業利益が同+186.4%の86.1億円まで拡大し、そこから一貫した上昇基調を続けています。

学校の授業をオンライン化する「GIGAスクール」構想によって、タブレット上に文字や絵を書き込むペンタブレットの需要が増加する期待が背景にあります。

同じようにネット通販のBEENOS(ビーノス、3328、第10位、+57.9%)は、11月5日に9月本決算を発表し、売上高は前年比+2.4%の258億円でしたが、営業利益は同+97.7%の33.7億円に急増しました。
Q1にメルカリと業務提携して、BEENOSのネット通販の代理購入サービス「Buyee」を経由して、「メルカリ」に出品された品が世界中で販売が可能になったことが好調の要因です。

テレビ会議システムのブイキューブ(3681、第25位、+46.9%)も、11月12日に発表したQ3の決算において、売上高が前年比+17.3%の53.1億円、営業利益は5.5億円の黒字(前期は▲1.6億円の赤字)に浮上したことが好感されました。
リモートワークの定着にしたがって、ブイキューブの業務も急速に拡大していることが確認され、すでに上昇過程に入っていた株価は一段と人気化することとなりました。

6630,6727,3328,3681

週足12/14まで表示

10月までの上昇相場を牽引していたマザーズ市場の買い方のエネルギーが、そのまま東証1部の小型成長株に流れ込んできたと見ることができます。

このほかにも、グレイステクノロジー(6541、第26位、+46.4%)、Keeper技研(6036、第33位、+42.1%)、ワイエイシイHD(6298、第39位、+40.8%)、セントケアHD(2374、第50位、+37.6%)などが同じようなグループとして、業種を飛び越えて上昇しています。

6541,6036,6298,2374

週足12/14まで表示

「HOTな銘柄」の流れをもうひとつ挙げるとすれば、バリュー株の人気回復です。

これまで何度もトライしてみては挫折を繰り返してきたバリュー株投資ですが、とうとう11月相場で報われる時を迎えました。きっかけはやはりここでも決算発表です。

電線大手のフジクラ(5803、第23位、+48.0%)が11月2日に発表したQ2の決算は、売上高が前年比▲12.5%の3005億円でしたが、営業利益は同+54.3%の89.0億円となりました。

通信データ量の爆発的な増大で光ファイバーに対する需要は大きいものの、競争が激しく売上げは大きく減少しました。
それを、構造改革による固定費の削減、銅価格の市況上昇、および巣ごもり需要によるデジタル機器の増加、で補って営業利益の回復につなげたという内容です。

フジクラの株価は足かけ3年で高値から5分の1に下落していたこともあって、この決算をきっかけとして反転上昇に向かいました。このようなパターンをたどるバリュー株が続出しています。

日産自動車(7201、第63位、+34.5%)が11月12日に発表したQ2の決算は、売上高で前年比▲38.2%の3兆0926億円、営業利益は▲1587億円の赤字でした。

大幅な赤字は避けられませんでしたが、コロナ禍で失われた販売台数は着実に回復しており、さらに固定費の削減、インセンティブの低減、1台当たり収益性の向上などを着実に進めており、7~9月期の3か月間だけでは営業赤字は▲48億円にとどまることが株価上でも好感されています。

日産自動車の株価は2015年6月の1350円から、2020年4月には311円まで下落して、そこで反転しました。
決算の悪化に対して、もはや売り物が出ない水準まで値下がりしており、そこから上昇反転の道が拓けたと見られます。

バリュー株と言えば東京ドーム(9681、第8位、+61.7%)です。

香港を拠点とするアクティビスト、オアシス・マネジメントが東京ドームの大株主に登場して以来、1年にわたって企業統治上の改革を迫られています。
その状況に対して三井不動産(8801)が東京ドームにTOBを行って、事実上の救済を図ることが明らかになりました。

これに対してオアシス・マネジメントは、株式の買い増しを宣言してTOB合戦に発展すると市場は予想しました。
しかし予想は外れ、オアシスは三井不動産のTOBにあっさりと応じて、株式を手放すことで決着することになりました。

5803,7201,9681,8801

週足12/14まで表示

世界的なカネ余り現象もあって、アクティビストの活躍が目立っています。
それらの「モノ言う株主」から目を付けらるほど、株価が低い水準に放置されている企業が日本にはたくさん存在しているようです。この点からもバリュー株への物色が復活する素地があると言えそうです。

11月値上り率ランキング

「COOLな銘柄」

続いて下落した銘柄、「COOLな銘柄」です。

日経平均株価が大幅に上昇したために、東証1部の騰落ランキングを作成すると、下位には株価の方向と反対に動く「ベア型ETF」がずらりと並びます。

その間をぬって個別銘柄を探してみると、こちらも決算発表に関連して値下がりした銘柄が目につきます。

ソフトクリエイトHD(3371、第2位、▲30.3%)は、自社で開発したシステムを通じてEコマース構築を支援するサービスを提供しています。10月21日に業績見通しを自ら上方修正したところ、株価はそこから大きく上昇しました。

それが実際にQ2の決算発表を行った時に、通期の業績を変更せず据え置いたことから今度は失望売りに変わりました。それほどまでに近い将来への期待値が大きかったということになりそうです。

コロナウイルスの影響が株価の動向にはっきり投影されています。
人々は外出を控え、それが小売企業に対して業績と株価に大きな影響を及ぼしているようです。

テーマパークのサンリオ(8136、第17位、▲17.8%)は、10月30日にQ2の決算を発表しました。
入場制限や台風の影響によって、売上高は170億円の前年比▲38.3%、営業利益は▲26.4億円の赤字に転落しました(前年は13.7億円の黒字)。

合わせて未公表だった通期の業績見通しを明らかにし、営業利益は▲40億円の赤字に、通期の配当金も無配とすることを発表しました(前期は年35円配)。

ぐるなび(2440、第22位、▲16.0%)も同様です。
10月28日に発表したQ2の決算で、売上高は58.2億円、前年比▲61.6%の大幅なマイナスとなりました。
営業利益は▲49.3億円の赤字に落ち込んでいます(前年は6.8億円の黒字)。

「食べログ」とともに日本有数のグルメサイトを運営しています。「GoToイート」キャンペーンの支援効果も期待されたのですが、それ以上に、消費者の間で外食の習慣が急激に変化しており、契約する飲食店からの手数料収入も大幅に減ってしまったことが響いています。

その分、テイクアウトや宅配グルメは順調ですが、宅配すし「銀のさら」を展開するライドオンエクスプレスHD(6082、第61位、▲10.5%)の場合、11月の株価は軟調に終わりました。

11月13日に発表されたQ2の決算は予想されたとおりに好調で、売上高は123.4億円で前年比+26.7%の伸び。
営業利益も12.6億円+146.0%といずれも好調でした。

しかしライドオンエクスプレスも通期の業績を据え置いたために(営業利益は22.0億円、+59.5%)、それを機に投資家の買い意欲は気勢がそがれてしまい、あとは一貫して下落基調をたどっています。

6月から9月にかけて、マザーズ銘柄とともに「withコロナ」下の小型成長株相場に乗って、株価は底値から4倍に上昇しました。
これ以上の水準での買い手がかりがつかめなかったことが、その後の下げ要因とも考えられます。

3371,8136,2440,6082

週足12/14まで表示

このほかにも消費関連株の一角として、

TSIHD(3608、第16位、▲17.9%)
青山商事(8219、第86位、▲9.7%)
オンワードHD(8016、第95位、▲9.3%)
AOKIHD(8214、第96位、▲9.3%)

などのアパレル各社の軟調な値動きが続いています。
いずれも3年間にわたって大きく下げた最終局面でまだ下落している、という状況です。
それでもさすがに値下がり幅は縮小しつつあります。

3608,8219,8016,8214

週足12/14まで表示

PBR(株価純資産倍率)で測れば、0.3倍を下回るという銘柄も出現しています。
消費者の行動が変わってしまったために、確かに事業環境は厳しい状況ではありますが、そろそろ下げ止まるだろうという希望も生れてくるレベルです。

11月値下り率ランキング

二極化相場はこれまでに何度も起こりました。
それでも明と暗がこれほどまで分かれる状況もめったにありません。
日経平均が歴史に残る上昇を遂げた11月相場の、もうひとつの側面です。案外それは、近々になにかしらの変化が起こることを示唆しているのかもしれません。

鈴木一之

鈴木一之

株式アナリスト

1961年生。1983年千葉大学卒、大和証券に入社。
1987年に株式トレーディング室に配属。
2000年よりインフォストックスドットコム、日本株チーフアナリスト
2007年より独立、現在に至る。
相場を景気循環論でとらえるシクリカル投資法を展開。

主な著書
「賢者に学ぶ 有望株の選び方」(2019年7月、日本経済新聞出版)
きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ」(2013年7月、日本経済新聞出版社)

主な出演番組
「東京マーケットワイド」(東京MXテレビ、水曜日、木曜日)
「マーケット・アナライズplus+」(BS12トゥエルビ、土曜13:00~13:45)
「マーケットプレス」(ラジオNIKKEI、月曜日)

公式HP
http://www.suzukikazuyuki.com/
Twitterアカウント
@suzukazu_tokyo

呼びかける時は「スズカズ」、「スズカズさん」と呼んでください。

当コラムは投資の参考となる情報提供を目的としており、特定の銘柄等の勧誘、売買の推奨、相場動向等の保証等をおこなうものではありません。
また将来の株価または価値を保証するものではありません。投資の最終決定はご自身のご判断と責任で行ってください。詳しくは「ご注意事項」をご確認ください。

最短10分で申込み完了!
無料口座開設はこちら

ページの先頭へ戻る