2月以降、旅行需要は大きく落ち込んだ
緊急事態宣言が全国的に解除されました。コロナ禍では外出や旅行の自粛が続き、飲食店や観光地では人出がかなり少なくなり、事業者の方々におかれましては、大変厳しい環境が続いているのではないかとお察しいたします。
観光庁が公表している旅行・観光消費動向調査(下表)をみてみると、1月から国内の旅行消費減少しており、特に3月の落ち込みが大きいことがわかります。まだ数値は公表されていませんが、4月・5月も同様の落ち込みになることは想像できるでしょう。
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、直ちに旅行需要が以前の水準を取り戻すとは考え難いかもしれません。しかし、誰しも出かけたい気持ちは高まっているのではないでしょうか?
Go Toキャンペーン事業(仮称)とは?補正予算を確認
事業者側の深刻な経営環境もあり、政府でも新型コロナウイルス感染収束後に消費を盛り上げる政策を示しています。4月30日に成立した補正予算では「Go To キャンペーン事業(仮称)」として1兆6,794億円が盛り込まれました。あくまでも「今回の感染症の流行の収束状況を見極めつつ」としながら「甚大な影響を受けている観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテイメント業などを対象とし、期間を限定した官民体型の需要喚起キャンペーンを講じる」とのことです。
Go To キャンペーン事業(仮称)の5つの施策
Go To キャンペーン事業(仮称)では、今回の感染拡大をうけて甚大な被害を受けている産業を対象に、5つのキャンペーンを発表しています。内訳を見ていきましょう。
①観光キャンペーン(Go To Travel キャンペーン(仮称))
旅行業者等経由で、期間中の旅行商品を購入した消費者に対し、代金の1/2相当分のクーポン等(宿泊割引・クーポン等に加え、地域産品・飲食・施設などの利用クーポン等を含む)を付与(最大一人あたり2万円分/泊)
②飲食キャンペーン(Go To Eat キャンペーン(仮称))
オンライン飲食予約サイト経由で、期間中に飲食店を予約・来店した 消費者に対し、飲食店で使えるポイント等を付与(最大一人あたり 1千円分)。
登録飲食店で使えるプレミアム付食事券(2割相当分の割引等)を発行。
③イベント等キャンペーン(Go To Event キャンペーン(仮称))
チケット会社経由で、期間中のイベント・エンターテイメントのチケットを 購入した消費者に対し、割引・クーポン等を付与(2割相当分)。
④商店街キャンペーン(Go To 商店街キャンペーン(仮称))
商店街等によるキャンペーン期間中のイベント開催、プロモーション、観光商品開発等の実施。
旅行関連銘柄を紹介
そこで今回は、時期尚早かもしれませんが、新型コロナウイルス収束後には需要が高まる可能性のある、旅行関連銘柄を紹介いたします。
株価の下落が大きく、ダメージの大きかった銘柄ほど今後仮に需要回復期に入った場合には株価が戻す余地があるとの観点から銘柄は以下の方法で選定しました。
・auカブコム証券のテーマ株アプリ、PICK UP!株テーマの「旅行」関連銘柄をPICK UP!
・2019年末終値~5月22日終値までの下落率順にランキング化
それでは早速結果を見ていきましょう。
1位日本航空 (9201)
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国内線、国際線ともにANAホールディングスに続く2位の航空大手です。 世界的な新型コロナウイルスの感染拡大が直撃し、足元ではあなり厳し業績となっております。4月28日発表したJALグループの3月の輸送実績は国際線が前年同月比73.8%減の20万7320人、国内線が同57.1%減の131万8751人と激減しています。4月30日に公表されて2020年3月期決算でも当期純利益は、前年対比64.6%減の534億円となりました。1-3月期だけをみると最終赤字に転落しており、株価も大きな下落となっております。
一方で直ちにとはいかないでしょうが、緊急事態宣言解除に伴い徐々に空運の需要が回復すれば原油安の恩恵もあり株価の戻りが期待できるのかもしれません。
2位藤田観光 (9722)
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ワシントンホテル、箱根小涌園天悠、ホテル椿山荘東京など、日本全国でホテル、レストラン等を運営してます。緊急事態宣言が発令された4月以降、ワシントンホテルや箱根小涌園天悠など多くの施設を営業休止としています。業績を大きく落ち込んでおり、5月21日に発表された第1四半期の決算では四半期純損益が60億円超の赤字となっておりました。
6月以降順次施設の営業を再開することを予定しておりますが、3密を避けながらどれだけ客足を戻せるかが今後の株価を左右すると考えられます。
3位エイチ・アイ・エス (9603)
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海外旅行に強みをもつ大手旅行会社です。ハウステンボスを傘下に収めており、ホテル事業も強化していました。
5月22日の記事執筆時点では2-4月の第2四半期決算発表はまだ行われておりませんが、旅行事業、ホテル、ハウステンボスともに大幅な落ち込みが予想されます。
一方でハウステンボスは営業を休止しておりましたが、5月16日より再開しております。徐々に旅行、観光需要が回復するようであれば、株価の下落も大きかっただけに今後の回復に期待したいところです。
4位ANAホールディングス (9202)
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国際線、国内線ともに国内首位の航空大手です。
1位の日本航空同様に業績が大幅に落ち込んでおります。4月28日に公表されて2020年3月期決算でも当期純利益は、前年対比75%減の276億円となりました。
こちらも日本航空同様に徐々に空運の需要が回復すれば原油安の恩恵もあり株価の戻りが期待できるのかもしれません。
5位リゾートトラスト (4681)
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国内首位の会員制リゾートホテル運営企業です。会員権事業、ホテルレストラン事業、ゴルフ事業、メディカル事業を行っています。
5月21日発表した2020年3月期の連結決算は、純利益が前期比42%減の71億円でした。やはり新型コロナウイルスの感染拡大を受けてリゾートホテルの利用が激減しています。2-3月は7万室の予約がキャンセルになり、営業利益で10億~12億円の赤字になった模様です。
今後徐々に旅行需要が回復しても、3密対策が求められるためフル稼働とはいかず、業績が従来の水準を回復するには時間を要するかもしれません。
いかがでしたでしょうか。
旅行関連銘柄はコロナ禍での業績の落ち込み、株価の下落が非常に大きかった業種ではないでしょうか。今後徐々に需要が戻る可能性があるとはい、第2波、第3波の警戒もあります。また、3密を避けながらの営業となるため、業績が以前の水準を回復するには一定程度時間を要する可能性があります。銘柄によっては資金繰りが懸念される事態もあり得るかもしれません。
一方で旅行や消費に対する欲求が溜まっている方も確実にいるはずです。政府のGo To キャンペーン事業(仮称)も消費を後押しすることが考えられます。
緊急事態宣言が解除されたからといって直ちに投資対応にするのではなく、しっかり銘柄を吟味していただき、投資の参考にしていただければ幸いです。
カブヨム編集部