公正証書遺言とは?
大切な財産を誰に残すかなどを記しておく遺言書にはいくつかの方式があり、そのうちよく利用されているものは2つあります。
まず一つ目は公正証書遺言です。証人2人以上の立会いの下、遺言者が公証人に対して口頭でその内容を伝えます。そして、公証人がその内容を筆記し、遺言者および証人に読み聞かせ、閲覧を行い、内容確認をした後、各自が署名・捺印を行って遺言書を作成する方式です。
過去に裁判官等の経歴のある法律の専門家である公証人が作成するため、書式不備の心配がありません。また、遺言書原本は公証役場に保管されますので、第三者による遺言書の改ざん、破棄などのリスクも回避できます。なお、公正証書遺言を作成する際には、相続財産に応じた費用が必要となります。
もう一つの方式は、自筆証書遺言です。これは、遺言者自らが全文を自筆で作成し、作成日付の記入、署名、捺印を行い、自ら保管する遺言方式です。自筆証書遺言は、費用をかけず手軽に作成できますが、書式不備のため無効となることもあります。その点、公正証書遺言は安心できる遺言方式であるといえます。
<2つの遺言方式の比較>
公正証書遺言でもトラブルになる可能性がある
安心感が大きい公正証書遺言でも、トラブルになる可能性もあります。
公証人が遺言者から聞き取った内容を遺言書にまとめてくれるので、書式の不備で無効になるなどのトラブルはないでしょう。
しかし、公証人は法律の専門家といえども、遺言の内容についての言及はしません。例えば、その内容が特定の相続人に著しく偏ったものになっていても、「遺留分(民法上法定相続人に確保された一定割合の相続財産)について考慮したほうがいいですよ」などのアドバイスをすることはないのです。
つまり、書式不備はなくとも、遺言内容にトラブルの火種がある遺言書が作成される可能性があるということです。その結果、遺言書の内容を不服とする相続人が現れた場合、相続人間でトラブルに発展してしまうかもしれません。
公正証書遺言を作成する場合でも、事前に、円満相続のためにどのような配慮が必要なのか、弁護士などに相談して決定しておくことが大切なのです。
執筆者:キムラ ミキ
ファイナンシャルプランナー 社会福祉士
日本社会事業大学で社会福祉を学んだ後、外資系保険会社、マンションディベロッパーに在籍後、FPとして独立。現在は、株式会社ラフデッサン 代表取締役として、個人向けライフプラン相談、中小企業の顧問業務をお受けする他、コラム執筆、セミナー講師、山陰放送ラジオパーソナリティとしても活躍中。
また、ライフワークとして障がい児・者の親なき後の経済準備についての啓発活動を行う上での課題研究を行うため、放課後等デイサービスや学習に困り感のある子供の学習支援教室にて、障がいのある子供たちの学習支援にも取り組んでいる。