住宅ローン返済中でも貯蓄は必要
住宅ローンの返済中に余剰金があった場合、貯蓄するか、繰上返済などで住宅ローンの返済に回すかは、悩みどころです。
住宅ローンは、返済期間を短くしたり、返済中に繰上返済するなどで、早く完済した方が、総返済額は少なくなります。
しかし、返済に回したお金は戻ってきません。そのため、貯蓄もできないほど目一杯返済にあててしまうと、急遽お金が必要になった時に手元に資金がない状態になってしまいます。最低でも、緊急予備資金や数年以内に使うお金は貯蓄して手元に置いておきましょう。
では、たとえば老後資金など、20年、30年先に必要になるお金はどのように準備したらよいでしょうか?
少しでも早く住宅ローンを完済し、その後準備を開始するというのもひとつの方法です。
しかし、もし長期で準備することができれば、運用することでより老後資金を殖やすことができるかもしれません。特に2024年からは新しいNISAが始まり、長期間にわたって非課税で運用できる環境も整いました。
住宅ローン返済を優先するのと、返済と並行して運用で老後資金を準備するのでは、どちらがお得なのでしょうか?
住宅ローンの金利以上で運用できるかがポイント
ふたつのケースで比較してみましょう。
<比較前提>
【住宅ローン】借入額 4,000万円、金利1.82%、全期間固定金利型、元利均等返済、ボーナス払いなし
【運用】年利1%、3%、4%で運用できた場合を想定。毎月複利で計算、収益は非課税。
【住宅ローンと運用の金額】毎月合計で166,058円
●パターン1
住宅ローンの返済期間25年、毎月返済額166,058円
住宅ローンの完済後、返済額と同額を10年間積み立てで運用
<パターン1の35年後の運用残高>
●パターン2
住宅ローンの返済期間35年、毎月返済額128,840円
住宅ローンの返済と並行して毎月37,218円を35年間積み立てで運用
<パターン2の35年後の運用残高>
運用の年利が1%だった場合、35年後の運用残高はパターン1の方が多くなっています。一方、運用の年利が3%の場合は、パターン2の方が約430万円、4%の場合には、約950万円も多くなるという試算結果になりました。
つまり、住宅ローン金利よりも高い年利で運用できるのであれば、早くから運用を始めた方が有利、住宅ローン金利よりも運用の年利が低いのであれば住宅ローンの返済を優先した方が有利、ということがわかります。
シミュレーションでは上記のような結果ですが、運用にはリスクがありますので、減る可能性もあり、必ずしもこのような結果になるとは限りません。しかし、リスクがあるからこそ、なるべく長期で行った方がリスクの軽減にもつながります。特に、住宅ローンの金利が低いうちは、運用のチャンスといえるでしょう。
住宅ローンの返済と並行して積み立てで運用する場合には、住宅ローンの金利以上で運用できているか、1年に1度は運用成績を確認しましょう。
特に住宅ローンが変動金利型の場合には、住宅ローンの金利も変動するので、綿密に確認することが大切です。もし住宅ローン金利が上昇し、運用の利回りとあまり差がないようであれば、返済を多めにするなどの調整もしてください。