世界的な資源化価格の上昇や、それに伴う電力不足を受けて、原子力発電を見直す機運が高まっています。
日本では岸田首相が休止原発7基の追加稼働に加えて、次世代原子炉の開発・建設の検討を指示しています。
フランスではマクロン大統領が昨年、新たな産業政策の中でSMR(小型モジュール炉)や先進的な原子炉の技術の実証に言及。
今年2月には、CO2(二酸化炭素)の排出量を2050年までに実質ゼロ化するとの目標に向け国内で改良型の原発6基を建設するほか、さらに8基の建設に向け調査を開始すると報道されています。
SMRとは既存の原子力発電と同様の仕組みですが、小型であることから工場で部品を組み立てて、現場で設置することが出来る原子炉のこと。
品質管理や工期の短縮が可能で、建設費が抑制されるメリットがあります。
設備が大きくなく、事故の際にも熱を逃がしやすく、安全性も高いという特長があります。
原発は温室効果ガスであるCO2を排出しないことから環境にやさしいエネルギーとして注目されてきましたが、使用済み核燃料や廃炉後に放射性廃棄物が発生するため、最終処分場などへの対応が問題となっています。
また、2011年の東日本大震災に伴う福島県の原発事故を受けて、開発を停止する動きが海外でもあり、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーに関心が移っていった経緯があります。
ただ、ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、西側主要国がロシアへの経済制裁を課す一方で、ロシアからの天然ガスや原油供給が滞ったことで価格が高騰。
発電に使われる石炭などの価格も上がり、電力不足に陥る地域も出ています。
そこで、再度原発への関心が高まってきています。
日本やフランスの動きはこうした流れに沿ったものです。
英国でも2050年までに原発を最大7基新設する可能があると伝えられています。
米国では今年4月、米エネルギー省が老朽化した原発の運転支援のための資金援助プログラムの募集開始を発表しています。
報道によれば米国では現在55か所で93基の原子炉が稼働し、これは米国の電力供給全体の19%を占めているとのこと。
ウクライナ情勢でエネルギー供給がひっ迫化する中で、原発による電力供給を維持し、エネルギーの安定供給を図ることが目的となっています。
ジョージア州は新たな原発2基を建設中で、他の州では原発の廃止計画を中止したところもあるそうです。
安全性の観点と価格優位性の点から、原発の見直しが進んでいます。
米国ではSMRで先行しており、ニュースケール・パワー(非取扱い銘柄)が2020年代末の商用運転を目指しています。
20年8月には初めて設計承認を取得し、米原子力規制委員会から安全性が認められています。
日本のIHIや日揮ホールディングスなどが同社に出資し、プロジェクトに参画しています。
米国原発関連6銘柄
米国の原発関連銘柄をピックアップします。
コングロマリット(複合企業体)の代表格。パワー事業部門が原子力発電関連を担当。
GEと日立製作所との原子力合弁会社GE日立ニュークリア・エナジーが21年12月にカナダでSMRを受注したと発表。
カナダの電力会社からの受注で、報道によれば受注額は3000億円規模で、早ければ28年に初号機が完成する。
GE日立は設計と機器の調達を担当。
原子力発電の燃料として使われるウランの採掘・精製で世界首位。本社のあるカナダのほか、米国、カナダ、カザフスタン、オーストラリアで事業を展開している。
ウラン鉱石の開発、採掘、製錬から濃縮、成形までを行う。
米国の大手エネルギー企業。発電や電力小売供給事業を手掛ける。
米国北部に原子力発電所を保・稼働し、発電した電力を卸売り顧客に販売。
また、他の原子力発電保有者にサービスを提供する。