新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとした世界的な景気減速懸念に伴う株式市場の大幅下落により、2月下旬以降から日本株の配当利回りの上昇が続いています。その象徴的な事例として、3月16日には、高配当株として人気が高い銘柄の1つである日本たばこ産業(2914)(以下、JT)の予想配当利回りが8%を超える水準にまで上昇しました。日経平均株価の予想配当利回りも3%に近づく水準となっています。
このような環境を踏まえてここでは、日本の高配当株を投資対象としている代表的なETFの1つである「NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信(1489)」を例に、組入銘柄の配当利回りの水準を確認してみたいと思います。
同ETFは日経平均高配当株50指数への連動を目指すETFです。日経平均高配当株50指数は、日経平均株価の構成銘柄のうち、予想配当利回りの高い原則50銘柄で構成される株価指数で、予想配当利回りおよび流動性を考慮して50銘柄を選定し、投資比率を決定しています。同ETFは日本を代表する企業の株式が組入上位となっており、組入上位15銘柄の予想配当利回りは以下となっています。
NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信(1489)の組入上位15銘柄
順位 | コード | 銘柄 | 株価 (円) |
予想配当 利回り |
PBR (倍) |
---|---|---|---|---|---|
1 | 9437 | NTTドコモ | 2912.5 | 4.12% | 1.75 |
2 | 8306 | 三菱UFJ フィナンシャル・グループ |
392.2 | 6.37% | 0.30 |
3 | 8001 | 伊藤忠商事 | 2032.5 | 4.18% | 0.98 |
4 | 7270 | SUBARU | 2029.0 | 7.09% | 0.92 |
5 | 4502 | 武田薬品工業 | 3030 | 5.94% | 0.96 |
6 | 8604 | 野村ホールディングス | 410.7 | 7.30% | 0.46 |
7 | 8411 | みずほ フィナンシャルグループ |
115.5 | 6.49% | 0.33 |
8 | 7267 | 本田技研工業 | 2238.0 | 5.00% | 0.45 |
9 | 7751 | キヤノン | 2125.0 | 7.52% | 0.82 |
10 | 8316 | 三井住友 フィナンシャルグループ |
2661.5 | 6.76% | 0.32 |
11 | 9433 | KDDI | 2802.5 | 4.10% | 1.49 |
12 | 2914 | JT | 1917.0 | 8.03% | 1.27 |
13 | 5301 | 東海カーボン | 728 | 6.59% | 0.73 |
14 | 8002 | 丸紅 | 537.5 | 6.51% | 0.46 |
15 | 8058 | 三菱商事 | 2296.0 | 5.74% | 0.62 |
※組入順位は2020年2月末、株価・予想配当利回り・PBRは2020年3月17日現在
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出所:野村アセットマネジメント、QUICKのデータを基に当社作成
これら15銘柄の予想配当利回りはあくまでも今期の予想、見通しであり、世界的な景気減速による業績への影響を考慮して、特に来期以降は配当金が減配となる銘柄も出てくるかもしれません。しかし、長期で見て配当水準の大幅変更がなければ、5年から10年程度の長期の高配当株投資は、配当金の積み上げることで株価下落の一定のクッションになることが期待できます。仮に5%の年間配当利回りを5年間受け取れば、累積の単純計算で25%となり、受け取った配当金が一定の株価下落をカバーすることが期待されます。そのため、配当利回りが上昇している環境は、配当に着目した長期投資が報われやすい局面にあると考えられます。
コロナショックで大幅下落している株式市場ではありますが、長期的な視点に立った高配当株投資のメリットを改めて見直すべき局面であるのではないかと考えています。
ファンドアナリスト 川上雅人