先端半導体の「TPU」が市場の話題となっています。
生成AI(人工知能)の登場以来、半導体大手 エヌビディア(NVDA) エヌビディア NVDAの「GPU」(画像処理半導体)が独り勝ちの状態となっていました。
もともとゲームの画像処理に使われていた半導体でしたが、対話型AI「チャットGPT」では膨大な計算量を短時間で行うための専用半導体として飛躍しました。
業績が急拡大し、時価総額も一時は5兆ドル(760兆円)に達しました。
まさに独り勝ちだったわけですが、ここにきて急速に変化の兆しが見え始めています。
アルファベット(GOOGL) アルファベット GOOGL 傘下のグーグルが開発し、2025年11月に発表された最新の生成AI「ジェミニ3」の評価が高いことが要因です。
ここにはアルファベットが独自開発したAI半導体「TPU(テンソル・プロセッシング・ユニット)」が搭載されています。
性能面でも先行するChatGPTやAnthropic(アンソロピック)の「Claude(クロード)」などに劣らないと評価されているようです。
株式市場ではエヌビディアの株価が好業績にも関わらず上値が重い一方で、アルファベットは堅調な値動きとなっています。
TPUはグーグルが2015年から自社のデータセンターで使い始めたものです。
それ以前はCPU(中央演算処理装置)やGPUを使っていたとされています。
効率を高めるために徐々に改良を重ね、生成AI向けに消費電力を抑えることも可能にしました。
TPUは処理スピードがGPU並みながら、価格を抑えることができていることが高評価となっています。
ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)である メタ・プラットフォームズ(META) メタ・プラットフォームズ(META)が、TPUをまとめ買いするのではとの報道も出ています。
では、これからはTPUがGPUを凌駕し、エヌビディアが衰退するのかといえば、そうとばかりはいえないようです。
エヌビディアのGPUは前述したように、もともとゲームの画像をより精緻に描画するために開発されています。
ゲームをされる方はわかると思いますが、滑らかで現実の場面のような動きが可能なのはエヌビディアのGPUのおかげといえます。
膨大な演算コアを備えて、複数の処理を「並列」で実行できることが強みです。
こうした構造により、高速なAI処理が可能になっています。
一方、TPUはAIの学習に不可欠な「行列計算」と呼ばれる大量の数値計算を高速で処理できることが強みとなっています。
行列計算は順次、繰り返して実行される演算で、高速かつ大量に処理できますが、「並列」ではないため汎用性が低く、計算だけに特化した設計といえます。
その分、消費電力も抑えることができます。GPUの方が、柔軟性が高く、プログラムの自由度も大きくなります。
一方、電力消費は多くなりがちになります。
つまり、一長一短があるといえそうです。
重要なのは、生成AIを含むAIの市場が拡大を続けているということです。
最近ではロボットでは人の言葉を理解し、自律的に制御するフィジカル(物理的)AIが台頭し、ヒューマノイド(ヒト型ロボット)での活用も進んでいます。
今後は自動運転やメタバースなどの分野でも利用される見通しです。
一方、一般的な商取引では、一つの特定品を買うのではなく、複数と取引をすることで欠品や故障などのリスクを回避するケースも見られます。
GPU一辺倒だったマーケットにTPUが登場したことは、リスク回避や使い分けなどで市場の拡大を後押しする要因になることが期待されます。
生成AI分野でオープンAIのライバルとされるアンソロピックは、グーグルとの提携から数週間後にエヌビディアとの大型契約を発表しています。
関連銘柄をピックアップします。
アルファベット GOOGL アルファベット GOOGL
インターネット検索で世界首位。
検索エンジン「Google(グーグル)」による広告収入で成長。
生成AI「ジェミニ」の将来性に期待感。
報道ではメタ・プラットフォームズが2027年に自社データセンターでグーグル製TPUを導入する方向で協議を進めている。

週足表示、2025年12月15日まで
価格はNYSEBQT参照
エヌビディア NVDA エヌビディア NVDA
AI半導体GPUを開発し、現在の主力はデータセンター向け。
先端の「ブラックウェル」が主力だが、強化版の「ブラックウェル ウルトラ」への移行が進む。
2026年後半には次世代の「ルービン」を、2027年後半には「ルービン ウルトラ」を投入予定。
進化するAI技術をけん引する意向。

週足表示、2025年12月15日まで
価格はNYSEBQT参照
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ AMD アドバンスト・マイクロ・デバイセズ AMD
半導体の設計・開発を手掛けるファブレスの半導体メーカー。
CPU、GPUを展開。
次世代半導体の「インスティンクト」シリーズは生成AI向けのGPUで、エヌビディア製品のライバルとして浮上。

週足表示、2025年12月15日まで
価格はNYSEBQT参照
インテル INTC インテル INTC
世界最大級の半導体メーカー。
受託製造にも展開。
2025年8月に米政府が89億ドルを出資。
2025年9月にはエヌビディアが50億ドル出資と共同開発で合意。
国策企業として経営再建が進む。
2025年7~9月期決算では最終損益が7四半期ぶりの黒字転換となった。
2025年10月までに先端半導体「18A」の生産を開始。

週足表示、2025年12月15日まで
価格はNYSEBQT参照
ブロードコム AVGO ブロードコム AVGO
半導体の世界大手。
ASIC(特定用途向け半導体)に強み。
データセンター、サーバー向けの製品供給などを行う。
米オープンAIが2025年10月に、同社と提携すると発表している。
独自に設計したAI向け半導体の量産を2026年後半に始める。
報道によればオープンAIが計算処理に特化した半導体を設計し、ブロードコムは量産を支援するという。
「TPU」の設計も手掛けている。

週足表示、2025年12月15日まで
価格はNYSEBQT参照





