地域差・個人差が考慮されていないデータは参考程度に!
親が子どもに求める教育レベルが高くなるほど、教育費も高騰します。必要な時期がわかる教育費は計画的に準備しておくのが大前提ですが、教育費のデータを鵜呑みにするのは危険です。その数字はあくまで全国平均であり、地域差や個人差は考慮されていないからです。
文部科学省の「子供の学習費調査」から、この10年の教育費の変化を見てみると、授業料無償化等により高校の学校教育費は減少したものの、学校外活動費は小中高すべてにおいて上昇しています。
<学校教育費と学校外活動費の変化>(年額)
公立中学校の学校外活動費の平均は年間約30万円ですが、その額と実際の費用との違いに驚く方も少なくないでしょう。例えば、学習塾一つにしても、月謝以外に入会金や教材費、夏期講習や冬期講習、直前講習や模試等の費用がかかります。首都圏では、中学3年の夏期講習だけで20万円超ということも珍しくなく、難関校を目指す場合、かかる費用は年間80万~120万円ともいわれています。もちろん、塾いらずの場合もあるでしょうが、教育費の平均額と実態がかけ離れているというケースは少なくないでしょう。
大学受験激化により教育費が高騰!?
大学受験に関しては「私立大学の入学定員管理の厳格化※1」により競争率が激化し、受験はヒートアップしています。さらに、2020年4月からは「高等教育の修学支援新制度※2」により、大学等の授業料等減免制度や給付型奨学金が拡充されました。これにより、今まで経済的理由で進学をあきらめていた優秀な子どもたちが受験に加わり、大学受験は厳しさを増すでしょう。ひいてはそれが、教育費の高騰や大学受験を回避したい親子の附属中・高受験の激化につながっています。
※1 大都市圏への学生の流入抑制のため、定員以上の人数を入学させることを容認されてきた私立大学の入学定員を厳格化し、基準以上の入学者を出した大学に対して、私学助成金をカットする制度。2016年から段階的に始まり、合格者数を減少させていることにより競争率が激化している。
※2 大学・短期大学・高等専門学校・専門学校を対象に、授業料等減免制度の創設と給付型奨学金の拡充。住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の学生(全体の約2割とみられる)に、授業料等減免は最大で年間約70万円、奨学金は最大で年間約91万円を支援する。
子どもの夢をかなえたくても、自然災害や新型コロナウイルス感染症など予期せぬ事態に家計状況が悪化することもあるでしょう。芸術の道を志して留学する、コロナ禍をきっかけに医学の道へ進むなど、親としてはうれしくもある半面、想定以上のお金が必要になるかもしれません。教育にかかるコストは親の時代とは違います。想定外の事態に備えて、今まで以上に計画的に準備しておきましょう。
執筆者:脇若浩子
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、個人投資家。
東京都出身。大手保険会社にて新人育成トレーナーとして商品勉強会・マナー研修講師等を担当したのをきっかけに、退職後の1999年にFP資格取得。その後、家族の海外転勤により、2002年からオーストラリア・パース→日本→オーストラリア・ブリスベン→日本→カタール・ドーハと、日本と海外を数年おきに移動する生活をしながら、FPおよびロングステイアドバイザーとして執筆・セミナー講師の仕事に従事、2019年に本帰国。女性のためのライフプランニングを得意とする。子どもを現地校・インターナショナルスクールで育てたことから、英語教育にも詳しい。個人投資家としては、株式投資・FXを得意とする。
主な著書等
オーエス出版社「AFP試験一発合格のきめて」 青春出版社「一生お金に困らない女になる!」
Webサイト
「女性のためのお金のため方・つかい方」