執筆者:カブヨム編集部
毎年年末が近づくと話題となる「ふるさと納税」ですが、2025年10月に制度の一部見直しが実施されており、その内容は“改悪”とも言われています。
株式等への投資や副業などで収入がある方は、ふるさと納税を利用する際の控除額の計算に注意が必要となるので、制度見直し内容と併せて事前に控除額を確認しておくと安心です。この記事では、ふるさと納税の基本、2025年10月の改正ポイント、副収入がある場合の注意点までをわかりやすく解説していきます。
ふるさと納税とは?
ふるさと納税とは、自分が応援したい自治体へ寄付をすることで、返礼品(地元特産品など)を受け取りつつ、翌年の税金(所得税・住民税)が控除される制度です。実質自己負担2,000円で、返礼品を受け取れるため、お得な制度として人気を集めています。
しかし、ふるさと納税を行っただけでは、自動で寄附金控除が受けられるわけではありません。控除を受けるためには、確定申告をする、またはワンストップ特例制度を利用して申請する必要があるので、注意が必要です。
10月からのふるさと納税が“改悪”といわれる理由
2025年10月1日以降、ふるさと納税におけるポイント還元が廃止されました。これにより、楽天ふるさと納税やさとふるといったふるさと納税ポータルサイトを経由して寄付した際に付与されていたポイントやその他の特典は、すべて対象外となります。
また、モッピーやハピタスなどのポイントサイトを経由したポイント付与も禁止となります。
これまでのポイント還元は各ポータルサイトやポイントサイトの負担によって実施されていましたが、10月以降は一律で認められない取り扱いとなります。
改正後もふるさと納税をうまく活用するには?
制度が変わったとはいえ、ふるさと納税のメリットがなくなるわけではありません。
次のような点に注意して、改正後もふるさと納税をうまく活用しましょう。
●控除上限の範囲内で使う
ふるさと納税で寄付をしてお得に感じるためには、控除の上限内で収めるのがポイントです。限度を超えて寄付しても全額控除されないため、損をしないように計画的に利用しましょう。上限額の試算には、ポータルサイトのシミュレーターを使ったり、税理士に相談したりするのがおすすめです。投資や副業からの収入がある人は上限額の計算には注意が必要です。
●実用的な返礼品を選ぶ
「定期便」「米」「ティッシュ」「外食チケット」など、生活費の代替となる返礼品は物価高の今こそ、価値を感じられる返礼品かもしれません。家計のサポートとして活用すると良いでしょう。
投資収益・副収入がある人が注意すべき点
株式等への投資や副業からの収入がある人は、上限額の試算に注意が必要とお伝えしましたが、具体的にどのような注意が必要なのかを見ていきましょう。
ふるさと納税の控除上限額は、「所得」をもとに計算されます。この「所得」には、会社の給与収入だけでなく、配当金や株式等の売却益、副業などから得た収入も含まれるため、これらの収入がある人は控除額が変動する可能性があるため注意が必要です。
株式等の投資収入がある人
●上限額が増えるケース
特定口座(源泉徴収あり)は、通常、証券会社が納税まで代行してくれるため、配当金や株式等の売却益について自分で確定申告をしなくても済む仕組みです。
しかし、その年に株式等の投資で得た利益を申告によって所得に含めることで、結果的にふるさと納税の控除上限額が増えるケースがあります。
たとえば、大きな譲渡益が出た年に申告分離課税として確定申告を行い、その利益をきちんと反映させれば、控除上限額が数万円以上増えることもあります。
●上限額に影響しないケース
また、含み益のみの段階(売却せずに保有したままの状態)も所得ではないため、控除額には影響しません。
このように、投資で利益が出た年は、ふるさと納税の控除額が変わる可能性があります。「今年、どの口座でどのくらい利益が出たか」をあらかじめ把握しておくことが大事です。
副業などで副収入がある人
副業などで給与とは別に収入がある人も、税務上は所得が増える扱いになります。これにより、ふるさと納税の控除上限が増えるケースがあります。
●上限額が増える収入の一例
- ライター・デザイナー等の業務委託報酬
- ブログ広告収益やYouTube収益
- 民泊など不動産所得
- 仮想通貨の売却益(雑所得として処理)
これらの副収入は雑所得や事業所得として確定申告を行うことで、課税所得に反映されます。
当然「所得」が増えるため、ふるさと納税の控除上限も引き上げられる可能性があるということになります。
投資収益も副収入も、「収入が増えるほど控除額も増えるだろう」と考えてしまいがちです。しかし実際は、口座の種類・確定申告の有無・申告方法(総合課税/分離課税)などによって控除上限額は変わるため、注意が必要です。
ふるさと納税を最大限に活用したい方は、最新の収入状況を総合的に確認したうえで、正しい控除上限額を把握してから寄付を行うようにしましょう。
投資収益や副収入がある人が確定申告で気をつけたいこと
投資収益や副収入があると、確定申告をすることでふるさと納税の控除上限額が増えるケースがあります。
ただし、この2つは仕組みが異なるため、次の点に注意しましょう。
●投資収益がある場合
株式の売却益や配当金が特定口座(源泉徴収あり)で処理されている場合は、基本的に確定申告をしなくても納税が完結します。
ただし、自分で確定申告をして利益を課税所得に含めると、その分ふるさと納税の控除上限が大きくなることがあります。
●副収入がある場合
副業やフリーランス収入、ブログ・YouTubeなどの広告収入、不動産所得や仮想通貨の売却益などは、給与とは別に課税対象となります。年間で20万円を超えると、ふるさと納税の有無に関わらず確定申告が必要です。
つまり「ふるさと納税をしなければ申告不要」というわけではなく、税法上の申告義務が別に存在する点に注意しましょう。
●注意すべきこと
確定申告をすることで控除上限が増えるのはメリットですが、同時に次のような影響もあります。
- 国民健康保険料が増える
自営業者や個人事業主の方では、所得が増えると保険料も上がります。会社員の健康保険料には影響しませんが、念のため確認しておきましょう。 - 配偶者控除や配偶者特別控除が減額・適用できなくなることもある
所得が増えると、配偶者特別控除の控除額が減少するだけでなく、一定額を超えると控除が受けられなくなる場合があります。また、条件によっては配偶者控除自体も適用できなくなることがあります。 - ワンストップ特例制度が利用できなくなる
会社員の方がふるさと納税をする際、寄付先が5自治体以内であれば、確定申告不要のワンストップ特例制度が利用できますが、確定申告をするとこの制度は利用できなくなります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・ふるさと納税の控除上限額が増える | ・国民健康保険料が増える可能性がある ・配偶者控除や配偶者特別控除が減額・適用できなくなることもある ・ワンストップ特例制度が利用できなくなる |
※画像は筆者が作成
このように、ふるさと納税の控除上限を増やすために確定申告を行う際は、これらのデメリットを把握し、メリットが上回るかどうか確認したうえで手続きするのが賢明です。
まとめ
2025年10月から実施された制度改正によって、ふるさと納税の「お得感」がやや薄れるかもしれませんが、制度そのもののメリットがなくなるわけではありません。
特に株式等の投資や副業などで収入がある人ほど、控除上限を正しく把握し、賢く活用することが重要になります。税金・投資・家計のバランスを意識しながら、自分に合ったふるさと納税の使い方をすれば、これからも制度を“味方”として活かしていくことができるでしょう。




