FIREとは?従来の早期リタイアとの違いは? FIREとは?従来の早期リタイアとの違いは?

FIREとは?従来の早期リタイアとの違いは?

昨今、「FIRE」が注目を集めています。1990年代後半から2000年代初頭にかけて米国で起こったFIREムーブメントが、日本で注目されはじめたのは2018年頃といわれています。経済的な不安や社会保障制度への不信感などに加え、ライフスタイルや価値観の多様化、さらには投資環境の変化などを背景に、新たなライフスタイルの1つとして、近年、関心が高まっています。

FIREと従来の早期リタイアとの違い

FIREは、「Financial Independence, Retire Early」、経済的自立と早期退職を意味する単語の頭文字をとった言葉で、資産運用により生活費を確保する仕組みを作った上で、早期に仕事をリタイアするライフスタイルを指します。資産運用によって不労所得が得られる状態を形成することで、経済的に不安がない状態で自分が望む生き方を実現する という点に大きな特徴があります。

FIREは、従来の「早期リタイア」とよく比較されます。通常の退職年齢に達する前に仕事を辞める、という点では共通していますが、従来の早期リタイアは、貯蓄や退職金・公的年金などを取り崩していくことを前提とするのに対し、FIREは、資産運用による運用益で生活費を賄い、一定の投資元本は減らさずに生活するという点で異なります。

FIREの種類とは?さまざまなスタイルがある

FIREは、リタイア後も働き続けるのか、完全に仕事を辞めるのか。つまり、リタイア後の収入の有無と、資産をどこまで準備するのか=FIRE達成までの難易度によって、いくつかのスタイルに分けられます。

<FIREの種類>


FIREの種類

※上記の図は筆者が作成


リタイア後は働かない前提のスタイルは、次のようなものです。


●Fat FIRE

  • 高額な生活費を維持しつつ、早期のリタイアを目指すスタイル
  • 生活費が高額なため、多くの資産が必要で、難易度も高い

●Lean FIRE

  • 必要最小限の支出で生活し、少ない資産で早期のリタイアを実現するスタイル
  • シンプルで質素な生活を目指す人向き

一方で、リタイア後も自由な働き方を目指すスタイルもあります。

●Barista FIRE

  • フルタイムではなく、フレキシブルな仕事で収入を得ながらFIREをするスタイル
  • カフェのバリスタに由来

●Side FIRE

  • 資産運用をしつつ、副業として勤労収入も得ていくスタイル
  • 自営業やアルバイトなど、好きな仕事で収入を得る

●Coast FIRE

  • いつでも仕事を辞められる状態にしつつ仕事を続けるスタイル
  • 資産形成は既にできているため、労働収入で生活費を賄いつつ資産は維持するだけでよい

FIREのメリット・デメリットとは

ここで、FIREにおけるメリットとデメリットを整理しておきましょう。

●メリットの例

  • 仕事や時間にとらわれない生活が送れ、精神的にも時間的にも余裕が生まれる
  • 経済的な不安からの解放によりストレスが軽減される
  • 生活の場所や働き方の選択肢が増える

●デメリットの例

  • 投資による収入を前提としているため、株式市場や景気など経済的な変動に弱い
  • 病気や災害など想定外のリスクに対応できない可能性がある
  • 早期のリタイアにより、健康保険や年金などの社会保障が手薄になる
  • FIREのスタイルによっては、社会との関わりが減少してしまう

FIRE実現のために適切な目標設定と必要なステップ

FIREの実現のために必要な4つのステップを紹介します。

①目標の設定

特に重要なのが目標の設定です。形成すべき目標金額が明確にならなければ、具体的な計画も立てられませんし、モチベーションも湧きません。重要なのは、どんな生活を送りたいのかを明確にし、理想とする収入や支出をもとに、形成すべき目標金額を導き出すことです。 その際に参考となる考え方の1つに、4%ルール(25倍の資産を準備する)があります。 年間生活費の25倍の資産を準備した上で、毎年、投資元本の4%未満を生活費として切り崩していけば、30年以上が経過しても資産が尽きる確率が非常に低い、という考え方です。 4%という数字は、米国株式市場の平均成長率7%と物価上昇率3%をもとに算出されています。

たとえば、生活費月25万円、アルバイトなどで収入10万円を得るBarista FIREを考えているとしましょう。この場合、月15万円(年間180万円)を25倍した4,500万円が目標金額となります。それを、何年で達成したいのか、また、何%程度の運用利回りで達成できるのか、などを具体的な金額で計算します。 下表は、月の生活費別の目標金額と、毎月の積立(投資)額、目指す運用の年率によって、何年で目標金額に到達できるかを表したものです。おおよその到達期間の目安として、参考にしてみてください。

<積立金額別目標金額までの年数の目安>


積立金額別目標金額までの年数の目安

※上記のシミュレーションは筆者が作成

②現状の把握と具体的な行動計画

目標金額が設定できれば、毎月(または年間)の貯蓄額が決まり、次は、そのための具体的な行動計画が立てられます。まずは、現在の収入と支出、貯蓄額や投資の状況を正確に把握し、現実とのギャップを確認した上で、改善すべき点を具体的にあぶり出します。 たとえば、支出の最適化のために、固定費の削減や変動費を見直す一方で、本業の収入アップはできないか、副業やサイドビジネスなどで副収入を得ることができないかなど、収入を増加させる方法も検討します。 さらに目標の利回りを達成するための資産配分を決定し、運用する商品を決めていきます。その際、万一の場合にも対応できるよう、緊急予備資金として預貯金等を準備した上で、無理のない投資を行うことが、FIREの実現には重要です。

③リタイア計画の実行

いよいよ目標金額に近づいてきたら、リタイアを検討します。実際に仕事を辞めるという段階で戸惑ってしまう方も現実的には多いようですので、辞めるタイミングや、退職金・公的年金の額なども踏まえて、ご自身で納得感を得ながらしっかりと計画することが大切です。
この時点であらためて、FIREのスタイルを再考することも必要かもしれません。

④リタイア後チェック

リタイア後は、定期的な資産状況のチェックが必要です。あくまでも、資産を取り崩さずに生活をしていく、というのが大前提ですので、資産状況を確認しながら、必要に応じて収入をプラスすることを考えるなど、スタイルの見直しも必要でしょう。

FIREの注意点!目指すにあたっての心構え

目標を設定し、目標に向かって具体的な行動を起こしていく上での注意点をお伝えします。

・柔軟な考え方や長期的な視野が重要
目標や計画にこだわり過ぎるあまりに、極端な節約をしてしまい、それによって現在の幸福度を下げてしまうことなどは避けたいところです。計画にこだわり過ぎず、長期的に考えることも大切でしょう。

・環境の変化などに合わせて柔軟に対応する
環境変化のスピードが激しい現代です。市場環境などが大きく変わったら、目標を変えるなど、その都度柔軟に対応していくこともポイントとなります。

・自分自身の価値観に基づいたライフスタイルを選択する
一般論や他人の話、特にSNS上の情報にとらわれ過ぎないことも大切です。経済的に自由になって、自分が選択できる立場になる、という点がFIREの大きな目的ですので、自分自身がどうありたいのか、自分のライフスタイルを考えることが重要です。

FIREをすることだけが正解ではありません。何のためにFIREをしたいのか、自分と向き合って考えることが大切です。目的が達成できるのであれば、FIRE以外の選択肢も併せて検討しながら、ご自身で選択していただきたいと思います。

秋山友美

秋山友美


湘南・藤沢・茅ヶ崎の家計コーチ代表。
2005年よりファイナンシャルプランナーとしての活動を開始。
湘南に相談室を構え、20代から80代までの幅広い世帯に家計のアドバイスをおこなう。特に子育て世帯からの相談が多く、コーチングスキルも活かして女性の働き方や子育てなど総合的に相談にも乗っている。
家計相談、住宅購入相談、教育資金プランニング、退職後の人生設計、資産形成、保険見直しなど地域密着型の情報提供、アドバイスをしている。
男女共同参画センターや市町村主催の講座依頼が多数あり、家計管理やライフプラン、人生100年時代の資産形成、キャッシュレス決済などのテーマで講師としても活動中。また、地域情報誌にて「家計簿コーチング」連載中。

<保有資格>
CFP®(日本FP協会認定)(財)生涯学習開発財団認定コーチ
1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)

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