今さら聞けない…「NISA」って何? 今さら聞けない…「NISA」って何?

今さら聞けない…「NISA」って何?

NISAはなぜ導入された?

あちらこちらで「NISA」という言葉を耳にするようになり、NISAの浸透を実感します。しかし、言葉は聞いたことがあっても、実はよくわからないという声も多く、NISAのしくみを誤解しているケースもあるようです。ここで改めてNISAとは何か、確認してみましょう。

NISA(少額投資非課税制度)は、投資によって得た利益が非課税になる制度で、個人が投資に踏み出しやすいよう、少額からの投資を行う人のために2014年1月にスタートしました。家計の安定的な資産形成を支援する一方で、経済成長のために家計の金融資産を有効活用するという両面を目的としています。

では、NISAはなぜ導入されたのでしょうか?

日本では、戦後の高度経済成長期以降、「貯蓄が最も安全で賢い選択」という意識が長らく根付いていました。しかし、1990年代初頭のバブル経済の崩壊により、日本経済は長期の低迷期に入り、低金利時代が到来しました。そこで、日本経済再生のため、2001年「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと、さまざまな対策が打たれます。その中で、証券税制の整備の一環として特定口座制度が開始。株式の譲渡益に一律20%の税金が課されるようになり、さらに個人投資家を呼び戻す目的から10%の軽減課税が導入されました。 この軽減課税が終了するタイミングに、新たな切り口として、長期的に非課税で投資ができ、少額から始められる投資のしくみであるNISAが誕生しました。

NISAは制度開始以降、さまざまな改正が行われてきました。

<これまでのNISAの改正>

FIREの種類

2022年、政府は「資産所得倍増プラン」を打ち出します。これは、家計金融資産の半分以上を占める現預金を投資につなげ、企業が成長し利益を上げることを通じて、その利益の一部(配当や株価の上昇)を家計が受け取ることで家計の金融資産所得を拡大させる、というプランです。そのために、個人が投資に参加しやすい環境を整える対策として、NISAは大幅な改正が行われました。

NISAとはどんなしくみなのか?

通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や、受け取った配当に対して約20%の税金がかかります。しかしNISA制度を利用して、NISA口座内で投資した金融商品から得られる運用益は非課税となります。

NISAの利用には、以下のような条件があります。


  • 銀行や証券会社にNISA専用の口座を開設する必要がある。
  • NISA口座は、日本国内に住んでいる18歳以上なら誰でも開設できる。
  • ただし、口座は1人につき1口座のみ開設可能。金融機関の変更は、年単位で可能。

<2024年からの新NISAの改正ポイント>(図参照)

  • 非課税で保有できる期間は無期限
  • NISA口座では、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの枠が利用可能
  • 年間非課税投資枠は2つの枠の合計で360万円に拡充。さらに生涯で投資できる枠(非課税保有限度額)は1,800万円
  • 非課税保有限度額の再利用が可能

改正により、NISA制度はより使い勝手が良くなったといえるでしょう。

<2024年からの新NISA>


2024年からの新NISA

資産形成におけるNISAの役割とは

資産形成とは、将来の経済的安定のために必要な資産を長期的に増やしていくためのプロセスのことです。資産形成を行うには、貯蓄と投資がありますが、資産形成を投資で行う上でのお得な制度がNISAといえます。

ここでは、資産形成を長い期間をかけて作物を育てていく「農業」にたとえて解説してみましょう。

●資産形成=「農業」 農業では、長期的に畑を耕し、コツコツと作物を育てて収穫物を得ます。どんな作物(金融商品)を育て、どれくらいの収穫(利益)を見込むかを考えていくことが、資産形成です。
初心者の農家(投資家)であれば、最初から大きな農場を持つのではなく、少しずつ作物を育てるところから始め、収穫を得ながら経験を積んでいきます。資産形成も同様で、経験を積みながら、時間をかけてお金を育てていきます。

●金融商品=「農作物の種類」 資産形成をする際に利用する金融商品を、農作物の種類にたとえてみます。


  • 株式…少し手はかかるが、収穫が期待できる作物
    やや手間はかかりますが、うまく育てることができれば大きな収穫が期待できます。天候(市場)の変動によっては豊作になることもあれば、収穫が減るリスクもあります。初心者にとっては少しハードルが高いかもしれませんが、しっかり勉強して手をかければ、大きなリターンが見込める可能性があるでしょう。

  • 債券…安定して収穫でき、失敗しにくい作物
    じゃがいもや大根のような根菜類は、育てることが比較的簡単で、収穫の見込みも確実です。大きな収穫は期待できないかもしれませんが、安定した収穫が得られ、ゆっくりと資産を増やしていくことができます。

  • 投資信託…ミックス野菜セット
    あらかじめ用意されたセット(投資信託)であれば、さまざまな種類の作物(投資商品)が含まれているので、作物を選ぶ手間が省けます。さらに、プロの農業コンサルタント(運用の専門家)が管理してくれるので、任せておけば安心です。

  • NISA…特別な肥料付きの区画貸し農園
    何から始めたらよいかわからない初心者には、小さな規模から始めやすいように、整備された区画貸し農園がよいでしょう。限られた範囲の中で限られた作物を育てることができます。さらに、より多くの収穫を得ることができる「特別な肥料」も付いています。
    NISAは、非課税投資枠という限られた範囲の中で、限られた商品で投資をした場合に限って、通常は得た利益にかかる費用(税金)が免除され、運用益が非課税になるため、より多くの利益を得ることができる、というしくみです。
    このようにNISAを、特別な肥料付きの区画貸し農園というイメージでとらえると理解しやすくなります。

NISAを活用する際に注意すべきことは

NISAは、資産形成をする上で有利な制度ですが、NISAを活用するにあたって注意しておきたいポイントがあります。


  • 資産形成のゴールを明確にする
    資産形成は、将来のためにお金を増やしていくプロセスです。そこで、「何のために?」「いつまでに?」「いくら?」お金を準備したいのか、これらの点を明確にすることが資産形成のスタートとなります。

  • どのような方法で資産形成をしていくかを検討する
    資産形成のゴールを明確にしたら、たとえば、直近で使う予定のあるお金であれば貯蓄を活用しよう、老後資金など将来のためのお金であれば投資をしよう、などと、ゴールによって貯蓄か投資かを具体的に決めていきます。その上でNISAを活用するかどうかを検討します。

  • 投資の注意点を改めて確認しておく
    繰り返しますが、NISAは、制度を活用して投資を行い、運用益が出ても、本来は課税されるはずの税金が非課税になるというものです。NISAを活用すれば、それだけで有利というわけではありません。あくまでも投資をして利益が出た時にお得になる、という点を改めて認識しておきましょう。また、投資をする以上は、資金が増えることもあれば減ることもあります。その点もしっかり理解した上で、NISAを活用していくことが大切です。

将来に向けた資産形成をしていく上で有利な制度であるNISA。そのしくみをきちんと理解して、上手に活用していきましょう。

秋山友美

秋山友美


湘南・藤沢・茅ヶ崎の家計コーチ代表。
2005年よりファイナンシャルプランナーとしての活動を開始。
湘南に相談室を構え、20代から80代までの幅広い世帯に家計のアドバイスをおこなう。特に子育て世帯からの相談が多く、コーチングスキルも活かして女性の働き方や子育てなど総合的に相談にも乗っている。
家計相談、住宅購入相談、教育資金プランニング、退職後の人生設計、資産形成、保険見直しなど地域密着型の情報提供、アドバイスをしている。
男女共同参画センターや市町村主催の講座依頼が多数あり、家計管理やライフプラン、人生100年時代の資産形成、キャッシュレス決済などのテーマで講師としても活動中。また、地域情報誌にて「家計簿コーチング」連載中。

<保有資格>
CFP®(日本FP協会認定)(財)生涯学習開発財団認定コーチ
1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)

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