配当性向(はいとうせいこう)とは?投資にどう活用できる? 配当性向(はいとうせいこう)とは?投資にどう活用できる?

配当性向(はいとうせいこう)とは?投資にどう活用できる?

配当性向とは、企業が得た利益のうち、どれくらいの割合を株主に配当として支払うかを示す指標です。
例えば、ある企業が1年間で2,000万円の利益を上げたとします。このうち1,000万円を株主に配当として支払う場合の配当性向は50%です。

配当性向=(配当金総額÷純利益)×100%

近年、東京証券取引所(東証)は、上場企業に対して投資先として魅力ある企業になるよう、経営の安定性、稼ぐ力やブランド力、イノベーション力等において改善を求めています。この東証による上場企業への「持続的な企業価値向上の動機付け」により、上場企業では株主還元を強化する動きが強まっています。その一環として、企業は株主還元方針の中に配当性向の比率について目標を設けたり、目標値を引き上げることを考慮しています。

利益の多くを配当として支払う配当性向の高い企業は、株主にとっては持続的な配当を受け取れるという意味で魅力的です。ただ、企業の成長や設備投資に対しては資金が多く使われていない可能性もあります。

一方、配当性向の低い企業は、利益の多くを内部留保や設備投資に使っているということを示します。企業が発展するには投資が必要であり、そのための資金を内部留保に回している場合があります。 特に、急成長する企業は投資による事業拡大を図るため、無配や配当性向が低くなります。将来の企業の成長が期待できる半面、株主に還元される配当の割合は小さいということです。

では、配当性向を、投資にどのように活かしたらよいでしょうか。

配当性向を20%~50%を目安にして配当を決定する企業が多いのですが、配当性向の高さだけで投資先を判断することはできません。
株主還元方針に配当性向の目標を定めている企業を例に、企業の状況や事業の特性により配当性向の目安を考えてみましょう。

例えば、安定した収益が見込める事業は、配当性向が高い傾向があります。
たばこ事業を主軸とするJTの配当性向の目標は75%。収益が安定しており、研究開発や国際展開、環境対策などの分野には投資が必要ですが、成長段階にある企業に比べると投資は控えめといえます。
安定した収益を上げながらも研究開発に投資を必要とする化学業界などは、配当に還元する割合はやや低めになる企業もあるでしょう。ただし、同じ業種であっても経営方針によって配当性向の目標値は異なります。安定した収益を上げる成熟企業も40%~60%程度であることが多くなっています。

<配当性向を株主還元方針に定めている企業例>

配当性向を株主還元方針に定めている企業例

配当性向を株主還元方針に定めている企業例

・適合性、有用性、正確性、完全性を保証するものではなく、あくまで考え方を参考にしていただくことを目的としたもので投資勧誘を意図するものではありません。
・各企業のIR(投資家情報)ページ、決算報告書、株主還元方針より筆者作成。
(※)株主資本配当率=年間配当総額÷株主資本×100 (%) または、株主資本配当率=配当性向×自己資本利益率(ROE)×100 (%)
株主が出資した資本に対してどれだけの利益(配当)を還元しているかを示します。

また、利益の80%以上など多くを配当に回す企業もありますが、利益が減少した際に配当を維持できるどうかも押さえておきたいポイントです。
あわせてキャッシュフローが不足していないか、負債を多く抱えていないかなど財務面の健全性も見ておく必要があるでしょう。

投資判断を行う際には、配当性向だけでなく事業の特性、企業の財務状況、成長戦略などを総合的に判断することが大切です。

執筆者:村松祐子

村松祐子


ファイナンシャルプランナー(CFP® 1級FP技能士)。金融・証券インストラクター。
1987年より、大手証券会社において外国株式の東京証券取引所上場に際し、販売促進に携わる。資料作成、および、顧客向け株式セミナー、社内勉強会の運営に従事。1990年より富裕層向け資産運用コンサルティングに従事したのち、 株式調査部に転籍、経済・株式の調査を経験、機関投資家向け週間マーケットレポートの作成に携わる。資産運用の相談、経済・市場調査の経験を踏まえ、それらを総括したサービスを提供するFPへ転身。現在、資産運用・株式投資の個人レクチャー、セミナーのほか、ライフ&マネープラン相談を実施している。一人ひとりに合った資産形成の提案には定評があり、自立した個人投資家の育成にも力を入れている。『FPコスモス』代表。

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