信用取引の応用として株主優待の獲得のために使用される「優待クロス取引」があります。「優待クロス取引」とは、現物株式と信用取引の売りを同値で約定させる、株式優待を狙う人向けの取引手法です。
株主優待を手に入れるには現物株式を保有する必要がありますが、保有中に株価が下落してしまうと損失を出してしまうリスクがあり、なかなか始められない方もいると思います。
今回は株価の変動リスクを抑えて、株主優待を手に入れる方法をご紹介します!
優待クロス取引
1. 優待クロス取引とは
「優待クロス取引」は、株主優待を手に入れることを目的として、現物株式の買いと株価の下落が利益になる信用取引の売りを合わせて行うことで、損失と利益を相殺して価格変動リスクを抑えるという仕組みです。
価格変動のリスクを抑えるためには、同じ銘柄を同じ株数で現物株式の買いと、信用取引の売りを同値で取引する必要があります。
「優待クロス取引」は、株主優待は欲しいけど、その後の株価の下落による損失が怖いといった時に非常に役立つ取引手法です。
💡 優待クロス取引のメリット
現物株式と信用取引の売りを両方保有することで、株価が下落して現物株式が含み損を抱えても、
信用売りは含み益となる 👉 利益と損失を相殺できる!
2. 優待クロス取引のコスト
優待クロス取引で発生するコストは証券会社によって異なります。
auカブコム証券で優待クロス取引をする場合、以下のコストが発生します。
- 現物株式の買い手数料(手数料コースによっては無料)
- 信用取引の売建手数料(手数料コースによっては無料)
- 貸株料
- 現物株式と信用取引の配当金の差額(配当金が発生する銘柄のみ)
- プレミアム料(プレミアム料が発生する銘柄のみ)
- 逆日歩(制度信用で取引し逆日歩が発生した場合のみ)
📋 仮に約定金額が50万円の銘柄で優待クロス取引を行った場合
現物株式の買い手数料(ワンショット手数料コース)275円+信用取引の売建手数料(ワンショット手数料コース)198円+貸株料(一般信用取引の長期)41円(権利付最終日から権利落ち日翌日の2日間の数値)=514円のコスト
📌 取引コストの注意点
- 配当金やプレミアム料が発生する銘柄の場合は、その分のコストが上乗せされます
- 売り建玉の保有期間が長くなるほど、貸株料も大きくなります
- 制度信用で売り建玉を保有すると思わぬ逆日歩が発生する可能性があるため一般信用で取引するのがおすすめです
株主優待を獲得できても、必要なコストが株主優待の期待利回りよりも大きくなってしまっては意味がありません。
優待クロス取引をする前に、どのくらいのコストが発生するのかをしっかりと確認しておきましょう。
3. 優待クロス取引のやり方
優待クロス取引の具体的なやり方を解説していきます。
1. 現物買いと信用売りを発注
欲しい株主優待銘柄を選び、現物株式の買い注文と信用取引の売り注文を同じ株数に設定して、市場が閉まっている時間帯に成行で発注します。
📌 2つの注意点
👉 市場が閉まっている時間帯に成行で発注することがポイント
なぜなら、株式市場が開いている時に注文してしまうと、約定するタイミングがズレてしまい、同じ株価で約定できない可能性があるため。
また、場中に行われるクロス取引は、価格形成に影響を与える可能性が高く、法令で禁止されている「仮装売買」と判断される可能性があるため。
🕘 購入までの時間
👉 同じ株数かつ同じ値段で約定するように、寄付前に成行で注文する。
逆日歩の発生を防ぐため、一般信用取引での売り注文がおすすめです。
権利付最終日の取引時間終了までに現物株式を購入していないと、株主優待は貰うことはできません。
📝 逆日歩(ぎゃくひぶ)とは
信用取引において、売り残が買い残を大きく上回り株不足となると付く手数料のようなもの。品貸料相当金銭といいます。買い手は逆日歩が入るため有利になりますが、逆日歩を払わなければならない売り手は買い戻すために、相場は上昇しやすいといわれています。
2. 権利付最終日まで保有する
現物株式の買いと信用取引の売りの注文が両方とも約定していれば、あとは待つだけです。株主優待の権利を得ることができる権利付最終日まで保有し続けます。
3. 権利付最終日の15時45分以降に品渡で決済
権利付最終日が過ぎたら、信用取引の売り建玉を現物株式の買いを品渡で決済して完了です。
権利付最終日の15時44分以前に決済してしまうと、株主の権利が得られずに株主優待を受け取れないので注意しましょう。
📝 品渡とは
売り建玉を決済する際に、買い返済をせずに売り建玉と同じ数量の現物株式を引き渡して、売建てした時の株価から諸経費を引いた分の現金を受取る決済方法です。「現渡」とも言われています。
4. 優待クロスの注意点
優待クロス取引を行う際の主な注意点です。
- 寄付までに注文を発注する
ザラバや引けで優待クロス取引の発注をした場合、不公正取引に該当する恐れがあるので、寄付(後場寄りを含む)までに発注しましょう。
- 逆日歩が発生する可能性がある
信用取引の売り建玉を保有中に逆日歩が発生してしまうと、逆日歩の支払いが発生します。想定よりもコストが大きくなる場合があります。
- 配当落調整金が発生する
信用取引の売り建玉を保有中に配当金が発生すると、配当落調整金の支払いが発生します。
📋 配当落調整金
配当落調整金は、信用取引で権利付最終日をまたいで建玉を保有されていた銘柄に配当がある場合、配当金相当分として処理される金額のことです。信用取引の買いなら受け取り、信用取引の売りなら支払う必要があります。
配当金がある銘柄を優待クロス取引すると、現物株式による配当金と信用売りによる配当落調整金が差し引かれ、マイナスなら支払いになります。
当社では権利落ち日から配当落調整金の支払いが行われるまでの間、お客さまの余力を予想配当金額に基づいて拘束させていただきます。
- 株主優待を貰える条件を満たしているか
株主優待を貰える条件は銘柄ごとに異なる点に注意しましょう。
【株主優待の条件の例】
- 500株以上の株式を保有(数量)
- 現物株式を1年以上保有(期間)
条件を満たさないまま優待クロス取引を行っても、株主優待は貰えません。取引を行う前には、優待の条件をしっかりと確認しましょう。
5. 優待クロスシミュレーターを利用してみよう
auカブコム証券では、優待クロスに必要なコストと株主優待の想定価値をシミュレーションできる「優待クロスシミュレーター」を利用できます。
いつ優待クロスをすれば利益になるのか、権利確定日までに発生するコストがどのくらいなのかを計算してくれるので、非常に便利です。
口座開設は必要なく、無料で利用できます。
優待クロス取引
- 優待クロス取引は、同じ銘柄で現物株式買いと信用取引の売りを、同一条件かつ同一枚数で注文する取引手法
- 優待クロス取引は、現物株式を保有する場合の価格変動リスクを減少できる
- 優待クロス取引は、ザラバではなく、市場が閉まっている時間帯に成行注文で発注する
- 優待クロス取引は逆日歩を防ぐために一般信用取引がおすすめ
- 権利付最終日の15時44分以前に決済してしまうと株主優待の権利が得られない
- 配当落調整金の発生に注意
- 株主優待の条件を満たしているかしっかりと確認する
- 想定利回りやコストの計算には「優待クロスシミュレーター」を活用すると便利
【クロス取引に関するご注意事項】
- 寄付までにご発注ください。(ザラバや引けでのご注文は、直前値から株価が変動する可能性があり、不公正取引に該当する場合がございます。)
- 「同一株数」「同一執行条件(又は同じ効果となる指値)」でご発注ください。
(株数が不均衡となったり、異なる執行条件にてご発注いただいた場合には、直前値から株価が変動する可能性があり、不公正取引に該当する場合がございます。) - 日頃の出来高と比較して過大な数量のクロス取引はお控えください。その他、市場の価格形成に影響を及ぼす可能性が高いと判断される取引については、当社より売買動機等について確認させていただく場合がございます。