分配金がない投資信託は魅力がない?
投資信託では決算ごとに、運用によって得られた収益を投資家に分配しています。これを「分配金」と言います。
投資信託の分配金は運用成績を確認する際に重要なポイントの一つです。
分配金は運用成果の一部から支払われるため、その金額は実績次第です。もし良い成果を出すことができなければ、分配金が支払われないこともあります。
では、分配金がない投資信託は、運用成績があまり良くないのかというと、そうとは限りません。そもそも「分配金は支払わない」としている投資信託もあります。運用益を分配せずに再投資に回すことで、複利の効果を見込むのが「分配金なし」投資信託のメリットです。
分配金が支払われると、その分基準価額が下がります。決算の回数が多いとその都度運用資産が減るので、複利の効果は薄れます。中長期の運用で資産を大きくしたいと考えるのであれば、分配金が支払われないものや、決算の回数が少ないものを選ぶとよいでしょう。
分配金ありの場合、受け取るか再投資かを選べる
分配金ありの投資信託でも、分配金を「受け取る」か「再投資する」かを選ぶことができます。
下記はA投資信託で分配金を受け取った場合と再投資した場合での実績を比較したものです。
<分配金を受け取った場合と再投資した場合の比較の一例>
分配金ありの投資信託の運用成果は、基準価額ではなく、分配金込みの金額を見ることでわかります。
このA投資信託を2015年5月に65口(約100万円)購入し、5年間運用したとすると、分配金を受け取った場合は約163.5万円、分配金を再投資した場合には約173.8万円になり、両者の間には10万円の差が生じたことになります。
ただし、再投資の方がよいとは断言できません。分配金を受け取っておけば、その分の利益は確定します。しかし、再投資した場合には、その後基準価額が上がればいいですが、運用がうまくいかずに基準価額が下がってしまった場合には、利益を得ることができないということもありえます。
なお、分配金(※)は受取の場合でも、再投資の場合でも、20.315%の源泉所得税が課せられます。そのため、再投資する場合は税引後の金額で再投資されますが、通常購入時にかかる手数料はかかりません。
お小遣い的に定期的に受け取りたいのであれば、分配金ありを選び、中長期での運用を考えるならば、分配金なしまたは分配金ありで再投資、というように運用方針によって使い分けるとよいでしょう。
※分配金には普通分配金と特別分配金があります。特別分配金は元本の払戻金であるため課税されません。
執筆者:高田晶子
大学卒業後、信託銀行に就職、人事部配属。宅地建物取引主任者の資格を取得し、念願叶い不動産部で働くも、お客様と銀行のハザマで苦悩する。「この人、この不動産買っても大丈夫だろうか」と思っても言えなかった罪悪感がその後私をFPへ導いてくれたのかも。信託銀行退職後、イベント会社、不動産コンサルティング会社を経て、1996年、ファイナンシャルプランナーとして独立。2010年まで女性3人で活動、年間300件の相談業務を行う。2010年より金融デザイン株式会社(旧株式会社マネーライフナビ)の取締役。長年、個人のお客様の声を直接聞いてきたからこそ作れるコンテンツ作成を主に、失敗しないためのお金の知恵を学ぶ「お金の知恵アカデミー」を展開中。
<資格>
● 1級ファイナンシャルプラニング技能士
● 宅地建物取引士