コロナ禍で資産運用をはじめる人が増えている
2020年はコロナ禍で資産運用をはじめる人が増えたといえます。
2020年12月末のネット証券5社*の証券口座数合計はおよそ1,600万口座となり、前年同期比で2割を超える増加となっています。
*ネット証券5社は、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、auカブコム証券
資産運用をはじめる人が増えている要因は、
- (1)コロナショック後の国内外の株価上昇
- (2)超低金利に加えて物価上昇が定着してきたこと
- (3)将来に対する備えを意識する人が増えたこと
- (4)NISA制度が浸透してきたこと
などが挙げられるのではないでしょうか。
それぞれについてコメントしたいと思います。
まず、足元の株価上昇については、コロナショック後の先進国の超低金利政策と量的緩和策に支えられている面もあり、一部では懐疑的な見方もあります。しかし、日経平均株価が30年ぶりの高値をつけたことで、日本も含む世界の株価指数は長期では経済成長とともに右肩上がりに上昇してきたこと。その事実を多くの日本人が認識しつつあることが、資産運用をはじめる人が増えている要因になっているとみています。
次に、日本の超低金利政策は1999年から長らく続いていますが(この間、一時解除された期間あり)、2013年頃から日本の物価上昇(インフレ)が定着してきたことも大きいと思います。かつての日本は物価下落(デフレ)の時期が長かったため、デフレの時期はお金の価値は下がらなかったわけです。デフレは、お金の価値が下がらない、または価値が上がっていたため、資産運用の必要性は小さかったともいえます。それがデフレからインフレに転じて、特に食料品や生活必需品といった身近なモノの値段が大きく上がっていることもあり、インフレではお金の価値が下がることや、そのことによる資産運用の必要性を実感している人も多いのではないでしょうか。
そして3番目は、将来に対する備えを意識する人が増えたことです。2019年6月に金融審議会の報告書「高齢社会における資産形成・管理」が公表され、「老後2,000万円問題」が、クローズアップされました。老後2,000万円の計算根拠は、「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦2人のみの無職の世帯では、毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる」というものです。
この計算根拠はあくまでも不足額の平均であるため、人それぞれ生活様式が異なるので、捉え方は違うと思いますが、この老後2,000万円問題がきっかけとなって、コロナ禍で資産形成を見つめ直した方も多いのではないでしょうか。
最後にNISA制度です。NISAとは、2014年1月にスタートした個人投資家のための税制優遇制度です。2016年度からはじまったジュニアNISAと2018年1月からはじまったつみたてNSIAも加わり、これらの非課税制度を使って、結婚資金や住宅購入資金、教育資金を準備するといった前向きな資産形成を行う投資初心者が増えているようです。一般NISAとつみたてNISA、ジュニアNISAの合計の口座数はおよそ1,500万口座(2020年9月末)となっています。
2月13日はNISAの日、あらためて資産運用の必要性を考え、コロナ後の明るい未来へのために、自身の資産形成を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
ファンドアナリスト 川上雅人