コロナ禍で株主総会の延期が50社超に
緊急事態宣言が解除されたとはいえまだまだ新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、いよいよ株主総会のシーズンに入ってまいりました。
例年、3月期決算銘柄の定時株主総会が連日続き、1日に何十社も総会を開催する日もあるのが6月下旬です。しかし今年は例年にはない動きが見られそうです。それが定時株主総会の延期です。
国内のみならず、世界的にロックダウンや外出自粛が相次いだことで決算の会計手続きや集計作業に遅れがでており、本来の「事業年度終了から3ヶ月以内」の定時株主総会を延期する企業が続出しているのです。当社調査によると2020年6月5日時点で3月期決算企業の内、定時株主総会の延期を発表している企業は53社に及びました。
定時株主総会を延期するとどうなる?
では、定時株主総会を延期すると企業は、或いは株主はどのような影響がでるのでしょうか。
法務省が公表している「定時株主総会の開催について」によると
新型コロナウイルス感染症に関連し,定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には,その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるものと考えられます。なお,会社法は,株式会社の定時株主総会は,毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと規定していますが(会社法第296条第1項),事業年度の終了後3か月以内に定時株主総会を開催することを求めているわけではありません。(出所:法務省定時株主総会の開催について)とのことですので、会社法上は3ヶ月以内の定時株主総会開催は必須ではないようです。
では、定時株主総会総会を延期した場合の議決権行使の基準日はどうなるのでしょうか。
同じく総務省によると
基準日株主が行使することができる権利は,当該基準日から3か月以内に行使するものに限られます。したがって,定款で定時株主総会の議決権行使のための基準日が定められている場合において,新型コロナウイルス感染症に関連し,当該基準日から3か月以内に定時株主総会を開催できない状況が生じたときは,会社は,新たに議決権行使のための基準日を定め,当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する必要があります。(出所:法務省定時株主総会の開催について)とのことです。つまり定時株主総会を延期した場合には企業は新たな基準日を設けて、その基準日に株主名簿に記載のある株主が議決権を行使することができます。この場合、3月末の本来の権利確定日に株式を保有していた株主は議決権行使ができないため、注意が必要です。
では配当金等の取扱いはどうなるのでしょうか。これは企業に延期を発表した企業によって対応が異なり、大きく分けると以下の2つに分かれるようです。
①本来の期末(2020年3月31日)を基準日として株主に配当を支払う
②定時株主総会の延期に伴い、新たに設けた基準日を元に株主に配当を支払う
当社調べでは②の対応をとる企業は少数ではありましたが、当該企業の株主は、本来の基準日に株式を保有していたものの配当が取得できない事態が発生しそうです。
3月期決算企業の内、定時株主総会延期を発表した企業一覧
そこで今回は、当社が調査した3月期決算企業の内、定時株主総会延期を発表した企業の一覧を公表します。投資家の方は、ご自身の保有銘柄見比べて、定時株主総会の日程や基準日の変更を確認いただければと思います。
中でも特に注意が必要なのは配当金の基準日も変更されている以下の企業です。
- サンリツ(9366)
- ナンシン(7399)
- オリンパス(7733)
- ユニプレス(5949)
- 曙ブレーキ(7238)
- NTN(6472)
延期ではなく延長?株主総会の継続会とは
継続会とは株主総会の議事を何らかの事由で完了できず、その延期又は続行について決議があった場合、後日改め開催される総会のことを差します。
今期に当てはめると、新型コロナウイルスの感染拡大により決算の会計手続きや集計作業に遅れが生じ、株主総会で報告できない場合、取締役の選任等の決議を当初の株主総会で先に行って、計算書類、監査報告等の報告は後日の継続会で行うというものです。
この継続会に関しては金 融 庁・法 務 省・経済産業省が連盟で2020年4月28日に文章を公表しており、その中でも
継続会をはじめ例年とは異なる株主総会運営を行う場合には、形式的・機械的な基準によるのではなく、その実質・趣旨に着目した対応を行うことが強く期待される。(出所:経済産業省継続会(会社法317条)について)と記されています。
継続会を行うこと発表した企業一覧
auカブコム証券が企業の適時開示情報から調査したところ、6月5日時点で継続会を行うことを発表した企業は30社でした。下表がその一覧になります。
継続会の開催を決定した企業の株主は、議決権行使の基準日変更や配当受取の基準日変更が無いため、影響は少なくすみそうです。しかし、複数回に渡り総会が開催されるため、企業側、株主がともに手間が増えることにはなりそうです。
オンライン等での株主総会の開催
その他にも、今後は株主総会のオンライン化も進展する可能性があります。経済産業省によると、現行法下でも株主総会を開催するリアルの「場所」を設けつつ、オンライン等での参加・出席を認める「ハイブリッド型バーチャル株主総会」を実施することは可能です。
既に安川電機(6506)やカプコン(9697)がハイブリッド型バーチャル株主総会を行うことを発表しました。今後もハイブリッド型バーチャル株主総会を行う企業が増加するかもしれません。
コロナ禍を契機に、株主総会の景色も変わっていくのかもしれませんね。
カブヨム編集部