執筆者:カブヨム編集部
近年、フィンテック(FinTech)という言葉が頻繁に聞かれるようになりましたが、具体的にどんなものを指すかご存じでしょうか?
フィンテックの基本概念からその実例、さらには今後の展望について詳しく解説いたします。
フィンテックとは?
フィンテック(FinTech)は「Finance」と「Technology」を組み合わせた造語であり、金融とテクノロジーの融合を指します。従来の金融サービスの効率化、新しい金融商品やサービスの創出、そして消費者に対する利便性の向上など、多岐にわたる影響を及ぼしています。フィンテックの登場により、金融業界は急速な変化を遂げ、新しいビジネスモデルが生まれているといえるでしょう。
フィンテックの進化は、単に技術的な革新にとどまらず、社会全体に大きな影響を与える可能性を秘めています。
<フィンテックのイメージ>

※画像は三菱UFJ eスマート証券が作成
最新のフィンテックの具体例
フィンテックの実例として、以下のようなものがあります。それぞれのサービスは、私たちの金融生活をより便利で効率的なものにしています。
モバイルバンキング
モバイルバンキングは、スマートフォンを利用して銀行業務を行うことができるサービスです。振り込みや残高照会、口座管理などが手軽に行え、従来の銀行窓口に依存しない新しい金融生活を実現しています。このサービスは、忙しい現代人にとって非常に便利であり、銀行の営業時間を気にすることなく、自分のペースで金融管理ができるようになりました。
さらに言えば、モバイルバンキングは地方や遠隔地に住む人々にも大きなメリットをもたらしています。物理的な銀行支店が少ない地域でも、スマートフォンさえあれば同様のサービスが受けられるため、金融サービスへのアクセスが向上しています。このように、モバイルバンキングは、地理的な制約を超えた金融サービスの提供を可能にしているといえるでしょう。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを通じて資金を募る手法であり、個人や企業がプロジェクトを実現するための資金を集めることができます。これにより、資金調達の多様化が進んでいます。クラウドファンディングは、従来の金融機関を介さずに、直接的に支援者から資金を集められるため、スタートアップや個人プロジェクトにとって非常に有効な手段と言えるでしょう。
また、クラウドファンディングは、資金提供者にとっても魅力的です。プロジェクトのアイデアや理念に共感し、直接的に支援できることで、投資に対する満足度が高まります。また、成功した場合にはリターンを得られる場合もあるという点でも、満足度に寄与しているでしょう。このように、クラウドファンディングは、資金調達のあり方を大きく変革しています。
暗号資産(仮想通貨)
暗号資産は、従来は「仮想通貨」「暗号通貨」と呼ばれていましたが、2020年5月1日に金融庁が「暗号資産」に改称しました。暗号資産はブロックチェーン技術を基盤にしたデジタル通貨であり、ビットコインやイーサリアムなどが代表的です。これらは、国境を越えた取引や投資の新しい手段として活用されています。暗号資産は、従来の通貨と異なり、現時点では中央銀行や政府による直接の管理を受けないため、自由度の高い取引が可能です(※1)。
さらに、暗号資産は国際送金のコストを削減する手段としても注目されています。
従来の金融機関を通じた送金には、複数の中継銀行を経由するため、高額な手数料がかかることが多いですが、暗号資産を利用することで、これらのコストを大幅に削減できる可能性があります(※2)。こうした特性により、暗号資産は国際的なビジネスや投資家にとって重要なツールとなっています。
(※1,2ただし、各国の規制や法律の影響を受けることがありますので、必ず最新の情報を確認する必要があります)
資産形成のヒントに!フィンテックのメリット
フィンテックを活用した資産形成には、以下のメリットを理解し、賢く活用することで、より効果的な資産形成が可能となります。
多様な投資機会を得られる
フィンテックの進化により、投資家は株式や債券だけでなく、暗号資産などの新しい投資機会にアクセスできるようになりました。
また、投資判断にロボアドバイザーを利用することで、アルゴリズムに基づいた投資運用が可能となり、ポートフォリオを自動的に構築することができます。専門知識がない個人投資家も、データに基づいたアドバイスを受けられるようになることで、より効率的な資産形成に役立てられるかもしれないという魅力があります。
リスクの可視化がしやすくなる
フィンテックの技術を活用することで、投資リスクの可視化が容易になりました。例えばAIを活用したリスク分析ツールは、膨大なデータを解析し、潜在的なリスクを早期に発見する可能性があります。
また、証券会社の提供する投資アプリなどを活用すると、投資成績やポートフォリオを可視化しやすくなります。その結果、ご自身の投資傾向を把握し、リスク管理の一助とすることが期待できます。
コスト効率の良い資産運用を実現
フィンテックを活用することで、従来の金融機関にかかる手数料を削減し、よりコスト効率の良い資産運用が実現できます。例えば、オンラインプラットフォームを利用することで仲介手数料を削減できるほか、自動化されたサービスにより運用コストを低減することが可能です。これにより、より多くの資金を投資に回すことができ、資産形成を加速させることができます。
これらのポイントを押さえることで、フィンテックを活用した効率的な資産形成が可能となるでしょう。フィンテックは、資産運用の新たな可能性を提供し、個人投資家にとっても大きなメリットをもたらしています。
押さえておきたい、フィンテックのデメリット
もちろん、最新の技術を用いたフィンテックは、発展途上な点もあり、メリットばかりというわけではありません。デメリットになりうる点も理解したうえで活用することが大切です。
セキュリティリスクと個人情報保護の問題
フィンテックサービスはインターネットを通じて提供されるため、サイバー攻撃のリスクが伴います。ハッキングやフィッシング詐欺により、個人情報や資金が不正に流出する可能性は0ではありません。
当然、各サービスを運用する側では、常にそうしたリスク対策を行う姿勢が求められますが、ユーザー側でも定期的にパスワードを変更するなど、セキュリティを意識しておくことも大切でしょう。
システム障害のリスク
フィンテックサービスは高度な技術に依存しているため、システム障害が発生するリスクがあります。また、障害発生時以外にも、定期メンテナンスなどでサービスが一時的に利用できなくなる可能性もあります。
一時的とはいえサービスが利用できなくなる時間が発生すれば、送金手続きや買い物など、希望する取引がスマートに行えないこともあるでしょう。
既存の金融システムとの整合性
フィンテックの急速な普及により、既存の金融システムとの整合性が課題のひとつとなっています。例えば、電子マネーや送金サービスを行う資金移動業者は、銀行法や資金決済法に対応する必要がありますが、規制が新しいサービスにどのように適用されるかが不明確な場合があります。
また、暗号資産は各国の税制やマネーロンダリング防止規制が異なるため、国際取引において法的な整合性や規制の明確化が課題となります。
フィンテックの今後の展望
フィンテックの未来はどのように展開していくのでしょうか?
以下にその一部を紹介いたします。フィンテックの進化は止まることなく、さまざまな分野でさらなる発展が期待されています。
デジタルバンキングの進化
デジタルバンキングはさらに進化し、よりパーソナライズされた金融サービスが提供される可能性が高いでしょう。具体的には、AIによる顧客データ分析が進み、個々のニーズに応じた最適な金融商品やサービスが提案されることが期待されます。これにより、顧客満足度が向上し、より深い信頼関係が築かれるでしょう。
また、デジタルバンキングの進化によって、より直感的でユーザーフレンドリーなインターフェースの開発が進むことが予想されます。これにより、金融リテラシーの高くないユーザーでも、より簡単かつ身近にサービスを利用できるようになる期待が持てます。デジタルバンキングの進化は、金融業界全体の競争を激化させ、より革新的なサービスの提供を促すことへの期待も高まります。
サイバーセキュリティの強化
フィンテックの普及に伴い、サイバーセキュリティの重要性も増しています。安全性を確保するための新しい技術やプロトコルが開発され、金融取引の信頼性が向上することへの期待が持てます。特に、AIを活用したサイバー攻撃の検知や防御システムの導入が進めば、より高度なセキュリティの実現に寄与するでしょう。
さらに、個人情報の保護に関する技術も進化し、プライバシーの確保が強化されることが期待されます。これにより、ユーザーは安心してフィンテックサービスを利用できるようになり、サービスの利用が促進されるでしょう。サイバーセキュリティの強化は、フィンテックの信頼性を高め、さらなる普及の鍵となるという好循環が期待できます。
グローバル化の加速
フィンテックは国境を越えた金融取引を容易にし、グローバル化を加速させます。特に、暗号資産やデジタル決済の普及は、国際間の資金移動をよりスムーズにするでしょう。これにより、国際的なビジネスの展開が容易になり、企業や個人にとって新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれません。
また、グローバルな視点での競争が激化する中で、フィンテック企業は革新的なサービスを提供し続けることが求められます。これには、各国の規制や法律の違いを踏まえつつ、柔軟に対応することが必要であり、国際的な視点でのサービス開発がますます重要になるでしょう。
フィンテックのグローバル化は、世界中の人々によりアクセスしやすい金融サービスを提供する道を切り開いています。
まとめ
フィンテックは、金融サービスを劇的に変革する可能性を秘めた分野です。その活用により、個々の資産形成がより効率的かつ柔軟に行えるようになることが期待されます。
今後も進化を続けるフィンテックの動向を注視し、賢明な投資判断を行うことで、資産形成の新たな道が開かれるでしょう。