ブレークイーブン効果とスネークバイト効果
人は無意識に損することを避ける傾向があり、それは投資にも影響します。投資で損失が出た時に注意したい2つの心理についてお伝えします。
■ブレークイーブン効果
損をすると、その損失分を取り返そうと、普段よりも積極的にリスクを取ろうとする心理状態をブレークイーブン効果と言います。ギャンブルで負けが続くと、有り金を全部賭けてしまうような無茶な行動をするのは、この心理のためと言われています。
ブレークイーブンとは、投資や事業において、収益と費用が一致する「損益分岐点」を指します。損を避けようとする心理が、このブレークイーブンを極端に意識してしまうのです。
例えば、20%の利益を想定して100万円の運用を始めたとします。しかし損失が出て80万円になった場合、なんとか損失を取り戻そうとしても80万円に対して20%の利益では96万円にしかなりません。
80万円を100万円に戻すためには25%もの利益が必要となるので、無意識に想定以上のリスクを取ってしまうのです。
<ブレークイーブンを意識することでリスクが大きくなる>
※上の図は筆者が作成
また、値下がりした株式を持ち続け、買値に戻ったときに売却してしまう『やれやれ売り(戻り待ちの売り)』という行動も、損失がゼロとなるブレークイーブンを意識することで起こります。
■スネークバイト効果
ブレークイーブン効果とは逆に、損失を出した後にそれ以上損失が大きくなることを恐れて、リスクを取らなくなる行動のことを、スネークバイト効果と言います。蛇に噛まれると、その経験から蛇を極端に避けることからきています。
例えば、投資をしたものが値下がりし、最終的に損切りをした人が、その後、投資をすることそのものを止めてしまうような行動を指します。市場が暴落すると軟調な状態が続くのは、スネークバイトに陥っている投資家が多いためと言われています。
損失が出た時に注意すること
損を取り戻そうとするあまり無茶な行動をとってしまうブレークイーブン効果や、損失を過度に恐れて投資そのものを止めてしまうスネークバイト効果は、投資を行う上で誰にでも起こりうる心理です。
このような心理に振り回されないためには、次のような対策を事前にしておくとよいでしょう。
- ブレークイーブン効果やスネークバイト効果のような陥りやすい心理があり、合理的ではない判断をしてしまうケースがあることを知っておく
- 損失が出た場合は、客観的に自分の心理状態を確認する癖をつけ、いつも以上に冷静な判断を心がける
- 買値にこだわらずに、企業価値などを客観的な数値で判断するように意識する
投資をする以上は損をする可能性があります。損をした時に過度に不安になるような場合は、投資金額や投資対象の選択で無理がある可能性もあります。損失について自分の許容範囲を知り、その範囲で値動きをするような資産配分にすることも、これらの心理に対する対策のひとつと言えるでしょう。