新型肺炎の感染拡大をきっかけに国内の株式市場では、マスクやコロナウイルス、テレワークなどのテーマ投資が再び注目を集めるようになってきた。
一方、投資信託においてもテーマ型のファンドは数多くあり、ここ数年では、海外株式を投資対象とする特定テーマのインデックスファンドの設定が相次いでいる。そのテーマはフィンテック、人工知能(AI)、ロボティクス、バイオ、宇宙など様々である。テーマ型インデックスファンドの一部は、1年リターンで上位に顔を並べているようになってきていることから、注目すべきでないかと考えている。
テーマ型ファンドは、特定業種に偏っているため、マーケットの上昇局面には強いが、下落局面では弱いといった傾向が多くみられるようである。そこで今回注目したいのが、シャープレシオによる分析である。
シャープレシオとは、あるリターンを獲得するためにどれぐらいのリスクをとっているかを表すもので、この数値が高ければ高いほど、効率的な運用が行われたということを意味する。
計算方法は、投資のリターンから国債利回りなどリスクのない資産を引いたうえで、リスク(標準偏差)で割る。今は超低金利環境が続いているため、単純に投資のリターンをリスクで割って求めることができる。
シャープレシオの算出方法
値動きの異なるAファンドとBファンドの比較
シャープレシオを高めるには、リターンも重要な要素といえるが、リスク(標準偏差)を抑えることがより重要な要素といえる。
当社取り扱いの海外株式に投資をしているインデックスファンドで1年リターンが30%以上のファンドは7本となっており、シャープレシオ順に並べたのが下表となる。直近1年間は上昇相場だったこともあり、5本のテーマ型インデックスファンドがランクインしている。
ファンド名 | 運用会社 | シャープ レシオ (1年) |
リターン (1年) |
リスク (標準偏差) (1年) |
組入 銘柄数 |
|
---|---|---|---|---|---|---|
1 | イノベーション・ インデックス・ フィンテック |
三井住友 DS |
3.17 | 34.36% | 10.84% | 117 |
2 | eMAXIS Neo 宇宙開発 | 三菱UFJ 国際 |
2.65 | 34.87% | 13.18% | 26 |
3 | iFreeNEXT NASDAQ100 インデックス |
大和 | 2.02 | 34.72% | 17.19% | 100(注) |
4 | eMAXIS Neo バーチャルリアリティ |
三菱UFJ 国際 |
1.83 | 45.24% | 24.78% | 18 |
5 | iFreeNEXT FANG+ インデックス |
大和 | 1.51 | 37.55% | 24.87% | 10 |
6 | SMT MIRAIndex ロボ | 三井住友 トラスト |
1.51 | 31.24% | 20.70% | 48 |
7 | イノベーション・ インデックス・AI |
三井住友 DS |
1.50 | 36.39% | 24.30% | 41 |
参考 | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 三菱UFJ 国際 |
1.84 | 24.54% | 13.33% | 505 |
2020年1月末基準、内外株式/インデックス型、海外株式/インデックス型を対象
グレー表示がテーマ型インデックスファンド
注:NASDAQ100指数への連動を目指す投資信託や先物に投資しているため100銘柄としている
シャープレシオ1位のイノベーション・インデックス・フィンテックは、STOXX グローバル フィンテック インデックスの動きに連動する投資成果を目指したファンドであり、上位組入3銘柄はVISA、マスターカード、ペイパルである。ソフトウェアサービスを含む金融関連銘柄のウエイトが高いことやテーマ型ファンドとしては組入銘柄数が117銘柄と多いことが、相対的に価格変動を抑える結果となり(1年リスク10.84%)、高いシャープレシオとなっている。
2位のeMAXIS Neo 宇宙開発は、成長が期待される宇宙産業に関連する企業の株式に投資を行っている。組入銘柄数は26銘柄と少ないが、組入業種では資本財が約8割となっており、これら資本財セクターの組入銘柄の株価変動が相対的に小さくなり、1年リスクを13.18%に抑えることができたことが、高いシャープレシオに寄与したと考えられる。
4位のeMAXIS Neo バーチャルリアリティは、1年リターンが45.24%と対象ファンドで最も高かったが、1年リスクが24.78%となっているため、シャープレシオでは順位を下げている。
なお、つみたてNISA対象のインデックスファンドに限った場合に、1年リターンが最も良かったのが、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)である。同ファンドのシャープレシオは1.84となっている。
テーマ型インデックスファンドは、まだ運用期間の短いファンドが多いため、パフォーマンスを評価するのは時期尚早といえるかもしれない。しかし、海外株式を投資対象とするオーソドックスなインデックスファンドへの投資に加えて、テーマ型投資の視点も持つことが、運用効率を高める上で有効ではないかと筆者は考えている。特に、株式市場の変動性が高まっている2020年においては、テーマ型インデックスファンドのシャープレシオ上位ファンドに注目すべきと考えている。
ファンドアナリスト 川上雅人