1月のマーケットを振り返ると前半は中東情勢の緊迫化、後半は新型肺炎による感染拡大などで、マーケットが乱高下した局面であった。そのなかで、グローバルでみてどの資産やテーマが好調だったのかを図る指標として、今回は投資信託の1月の月間パフォーマンスに注目してみたい。
投資信託のパフォーマンスについては中長期でみるべきであり、1ヶ月のリターンは、下落トレンドの一時的なリバウンドが反映されるケースも多く、あまり当てにならない指標なのかもしれない。しかし、今年の1月に関しては、マーケットが乱高下した局目で上昇したことから、注目に値するのではないかと考えている。これらの投資信託の組入銘柄などを参考にして2020年に注目を集めそうなテーマを探ってみた。
当社取り扱い投資信託で1月月間のパフォーマンス上位10ファンドは以下の通りである。
ファンド名 | 運用会社 | 協会分類 | 1ヶ月 リターン |
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1 | 深セン・イノベーション株式ファンド (1年決算型) |
日興 | 海外株式 | 9.91% |
2 | サイバーセキュリティオープン (為替ヘッジあり) |
三菱UFJ国際 | 内外株式 | 7.52% |
3 | eMAXIS Neo バーチャルリアリティ | 三菱UFJ国際 | 内外株式/ インデックス型 |
7.44% |
4 | サイバーセキュリティ株式オープン (為替ヘッジなし) |
三菱UFJ国際 | 内外株式 | 7.34% |
5 | iFreeNEXT FANG+インデックス | 大和 | 海外株式/ インデックス型 |
7.26% |
6 | iTrust世界公益株式(為替ヘッジあり) | ピクテ | 内外株式 | 7.11% |
7 | iTrust世界公益株式(為替ヘッジなし) | ピクテ | 内外株式 | 6.34% |
8 | HSBC インド・インフラ株式オープン | HSBC | 海外株式 | 6.21% |
9 | イノベーション・インデックス・ フィンテック |
三井住友DS | 内外株式/ インデックス型 |
5.82% |
10 | SBI 日本株3.7ベアⅢ | SBI | 国内株式/ 特殊型 |
5.66% |
※2020年1月末基準
1位の深セン・イノベーション株式ファンドは、1月末にかけての上海および深センの株式市場の休場期間が延びたことで、1月末の株式市場の下落が反映されなかったという特殊要因がある。しかし、2月に入り基準価額は2日間で約8%下落したものの、その後3日間約12%の上昇となっており、年初来のパフォーマンスは堅調である。同ファンドの組入銘柄のテーマを見ると半導体、5G、ヘルスケア関連銘柄などである。新型肺炎拡大による影響を注視していく必要があるものの、グローバルでのテーマを見つける上で、中国のイノベーション企業にも注目すべきと考える。
2位、4位はサイバーセキュリティ株式オープンである。サイバーセキュリティは個人・企業・国における関心の高まりに加え、テクノロジーの発展に伴う長期的な需要が見込まれている。また今年は東京五輪があり、イベント開催時に注目が集まるテーマである。同ファンドの組入1位はマイクロソフトである(12月末現在)。
3位はeMAXIS Neo バーチャルリアリティで、同ファンドはバーチャルリアリティ(VR)関連製品を製造する企業やその開発ツールを提供しているなどが投資対象である。12月末現在の上位組入銘柄はエヌビディア(1位)やフェイスブック(2位)である。フェイスブックはSNSのイメージが強いが、VR分野で有望企業を買収し、同分野での今後の収益化が期待される。
5位のiFreeNEXT FANG+インデックスは、NYSE FANG+指数の動きに連動した投資成果を目指すファンドで、FANG(フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、アルファベット(グーグル持株会社))とテスラ、アップル、アリババ、ツイッター、パイドゥ、エヌビディアの10銘柄に集中投資している。同ファンドは米国および中国を代表するイノベーション企業群に投資しているのでテーマは豊富であるが、ひとつテーマを挙げるとするならば、同ファンドの組入1位はテスラ(12月末)であることから、電気自動車(EV)である。
その他では、6位、7位に世界の公益株式、8位にインドのインフラ株式が入り、ディフェンシブセクターの株式に投資する投資信託がランクインした。
一般的に株式市場で注目されるテーマについては、ニュースやイベントなどをきっかけにスポットが当てられて、循環的に物色されていくものである。そのため、個別株式や投資信託を使ったテーマ投資においては複数のテーマに分散投資することが有効と考えられる。加えて、ディフェンシブ株式への投資という視点も今後の価格変動が大きくなる局面を想定すると、押えておきたい戦略といえるだろう。
ファンドアナリスト 川上雅人