元インターバンク為替ディーラー 山中康司氏 執筆 米国・イラン問題 ~今後の為替・株などの投資の心構えと予測~ 元インターバンク為替ディーラー 山中康司氏 執筆 米国・イラン問題 ~今後の為替・株などの投資の心構えと予測~

元インターバンク為替ディーラー 山中康司氏 執筆 米国・イラン問題 ~今後の為替・株などの投資の心構えと予測~

米国・イラン問題 ~今後の為替・株などの投資の心構えと予測~

2020年1月13日執筆

年始の動きとして昨年はフラッシュクラッシュ、今年は米国とイランの対立激化懸念と、為替市場では元旦以外は動いているとはいうものの、東京勢としては正月気分が抜けきらないうちの振れが今年も繰り返されたという印象です。

中東は世界の火薬庫と呼ばれるくらい紛争が尽きない地域ですが、最近はその中心にイランがいて、その動きを米国が非難するという構図です。最近でも昨年6月のホルムズ海峡タンカー攻撃事件を米国はイランの責任とし、9月のサウジアラビア産油施設攻撃でも米国はイランが黒幕であるという発言をしていました。

そして米国とイランとの間での対立が深まる中で突然発生したのがイラクでのイラン司令官殺害事件です。これを受け休み明け6日の東京早朝市場はリスクオフによる株安と円高が進みましたが、イラン側の動きが無かったことからその日の東京前場のうちに戻しました。1日空けて8日早朝にはイランがイラク内の米軍施設を攻撃したことで6日安値を下回る動きとなりましたが、こちらも前場のうちに戻した上に欧州市場以降は米国の更なる攻撃は無さそうだとの楽観的な思惑からリスクオフの巻き戻しが急速に進み109円台を見る動きとなりました。

これらの出来事とその動きの間で私が何をしたのかについてチャートを見ながら簡単に触れておきましょう。

(チャート1)

(チャート1)

チャートは1時間足、青い四角で囲ってあるのが1日です。6日早朝と8日早朝のリスクオフの動きを黄色のラインマーカーで示し、下げ始める水準に戻した足まで赤い矢印を示しました。チャートで見るとわかりますがリスクオフの下げもその後の戻しも数時間しか継続していません。事件としては米国とイランの戦争リスクも考えなくてならないレベルだと思いますが、相場的には驚くほどの短期的な勝負でカタがついてしまいました。そして、9日の海外市場では対立懸念が後退しただけでここまでリスクオフに動けるのかというほどの動きです。

こうした動きは、これまでも何度も見てきているのですが、値幅的に激しかったものとしては2016年の大統領選でトランプ大統領の勝利が決まった時、また値幅は大したことは無くても米中通商協議進展期待後の決裂あるいは難航といったイベントでは似たような動きを何度も繰り返してきました。これには個人的にはイベントで一定のリスクオフに動いた場合に途中からカウンターでリスクオフの巻き戻しに動くようなアルゴリズムトレードが行われている可能性が高いと考えています。

株式市場では既に高速取引からAIを使ったアルゴリズムトレードに手法が変わってきていると言われますが、為替市場でも同様の動きがあると考えざるを得ません。私自身、外資系の金融機関でのディーラーでしたし、その後は皆さんと同じ個人投資家ですが、明らかに取引の手法が変わってきていることをこの4、5年感じています。それでも、自分なりの取引手法を確立した上で、市場環境に合わせた取引を行っていれば怖いことはありません。

以下は私の今年最初のトレードの紹介です。私自身は通常数日から2週間程度の時間でスイングトレードをしているのですが、ドル円を例に挙げると以前は1円程度を利食いのターゲットとしてきましたが、昨年は変動相場制移行後最少年間値幅が示すように、私もターゲットを50銭程度に狭めていました。そして、イランの動向がはっきりする前の6日時点での買い戻しは限界があると感じていたため、7日の東京後場14時過ぎに108.44で売りを作りました。

そして、その後は比較的静かな動きだったのですが、8日朝の下げを見てこれは行くのではないかと思って107.44と1円の利食いを狙ったのですが届かず、その後前日高値108.63を抜けた108.64のストップが入りました。これまでの動きを考えたら冷静に50銭でも利食っておくのが正解でしたが、こればかりは結果論です。20銭の損失で止められたことのほうを良しとしなければならないでしょう。そうした点で結果は損失ですが、計算された想定内の損失に収まっていますので、次に取り返せばよいだけです。どんな場合でもストップだけは置いておかないと大怪我につながります。

さて、ここからの展開ですが、日経平均株価とドル円の週足チャートを見ていきましょう。

(チャート2)

(チャート2)

材料的には米中通商協議も15日に合意署名、米国イラン問題も一段落となると、米国の金融緩和を背景とした米国株高がリスクオンにつながり、為替市場でも円安の流れが継続しやすいという単純な図式が出来上がります。しかし、今の水準は110円の大台に近いですし、日本株は日経平均株価の24,000円がなかなか上抜け出来ない状態です。短期的にはリスクオン方向に動きそうではあるものの、方向感がはっきりしないというところでしょうか。

しかし、週足チャートで見るとやや異なった景色が見えてきます。木ではなく森を見てここからの展開を考えてみようということです。ここでは2014年4月以降の同じ期間の日経平均株価と円相場を示しています。日経平均株価は2018年10月高値の244,48.07の両側に2018年初の高値と2019年末の高値を従えているチャートとなっていて、形はあまり綺麗ではないもののヘッド&ショルダー(三尊)っぽいパターンを形成しようとしているようにも見えます。NYダウが3万ドルということになれば、日経平均も2018年高値上抜けが視野に入りますが、NYダウのスピードが速いことから調整が入ると考える市場参加者も多く、あまり楽観的にばかりは見ていられません。1月中旬から3月期末に向けてどちらかの動きがはっきりとしてくるのではないかと考えています。

ドル円に至っては2015年以降のトライアングル(三角もちあい)を継続中で年々その値幅を狭くしてきているものですから、昨年の最少値幅も頷けます。このトライアングルで特に気になるのは上側のレジスタンスラインで、これまでも何度もレジスタンスで反落する動きを繰り返しています。そして、今週時点で110円の大台をやや上回る水準ですから、今回もここで反落するとすると、110円をつけてもダマシの円安で終わるという可能性があります。

米国と日本の経済は違いますし、昨年10月増税の影響が外食や小売りではかなり出ていると聞きます。目先の動きとして短期的にはリスクオンの株高と円安に行きそうな印象もありますが、もう少し長い目で見ると日本株と為替はリスクオフ方向にこそ注意が必要なのではないかと考えています。

(注)チャートは米国のテクニカル分析専用ソフト”Fibonacci Trader”で作図しました。

山中 康司(やまなか やすじ)氏

山中 康司(やまなか やすじ)氏 プロフィール


1982年アメリカ銀行入行、為替トレーディング業務に従事し1989年VP、1993年プロプライエタリー・マネージャーとして為替、債券、デリバティブ等の取引に携わる。1997年日興証券に移り、1999年日興信託銀行為替資金部次長として為替トレーティングとセールスを統括。2002年金融コンサルティング会社アセンダントを設立、取締役。為替情報配信、セミナー講師、コンサルティングをつとめている。「テクニカル指標の読み方・使い方」等著書も多数。

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