現役トレーダー羽根英樹氏 執筆 「株主優待狙いのイベントドリブン」 特別レポート 現役トレーダー羽根英樹氏 執筆 「株主優待狙いのイベントドリブン」 特別レポート

現役トレーダー羽根英樹氏 執筆 「株主優待狙いのイベントドリブン」 特別レポート

イベントドリブンを賢く活用!

イベントドリブントレードという言葉をこ存知でしょうか。この手法は様々な出来事、つまり「イベント」を利用して利益をあげようとする売買方法です。イベントの中でもコーポレートイベントと呼ばれる企業合併や公開買い付け(TOB)などは、よくヘッジファンドが好んで売買しています。イベントドリブンは、テクニカルもファンダメンタルズも使いません。需給の変化が、イベントドリブンの利益の源泉であると考えています。今回は数あるイベントの中でも、比較的実践しやすい「株主優待」を利用した イベントドリブントレードを紹介します。

みなさんご承知のようにいろんな会社が株主優待というものを実施しています。その多くは配当の権利同様、決算月の最終確定日をまたいで現物株を保有していればもらえます。その日が近づいてくると優待欲しさに買う個人投資家が増えてくるために値上がりすることが多いのです。この時期になると、投資雑誌などで株主優待を紹介する記事が出てきて、新たに買い付けする人も多くなるのでしょう。このような値動きを利用して売買益を上げるのにはどうすればいいのでしょうか。それには、優待欲しさに買う人の先回りをして早い目に買うことです。そしていよいよ権利確定日が近づいてきたら、権利日をまたぐことなく、売ってしまうのです。もちろん、この方法ですと株主優待はもらえません。せっかく株主優待がある銘柄を買っているのに、優待がもらえないなんてもったいない!と思うかもしれません。しかし権利日をまたいでしまえば、たいていは配当落ちにとどまらず、その数倍の値下がりが待っています。優待を取るのか値下がりを避けるのかの選択です。もしどうしても優待が欲しいなら、複数単元の株数を買って優待がもらえる株数だけを保持して残りは売却するというのも一案です。けれども、トレードでの利益だけを考えるなら、初めから優待の権利は取らないと決めてしまうというのが王道かもしれません。

それでは例をあげてみていきましょう。テンアライド(8207)は、3月末と9月末に権利日が来る優待銘柄です。「天狗」などの居酒屋チェーンを経営しており、全国展開していますので、ご存知のかたも多いでしょう。優待品は居酒屋で使用できる金券です。ここの居酒屋をよく利用する人なら、是非欲しくなる優待だと思います。今年9月権利日前のチャートをみると8月半ばから上がっているのがよくわかります。そこで1〜2ヶ月前、つまり7月下旬から8月ころに買って、9月の権利日前に売却すれば十分利益が取れました。

テンアライド(8207)のチャート

テンアライド(8207)のチャート

外食産業からもう1銘柄見てみましょう。梅の花(7604)は、和食レストランを中心に経営をしています。豆腐や湯葉といったヘルシーな食材の「梅の花」は強く女性に人気の店です。他の外食チェーンに比べるとやや高級店が多いのが特徴でしょう。実際に私も「梅の花」行ったことがありますが、客層はシニアが多く若い人やファミリーは少ない様に感じました。こちらもお店で使用できる金券を優待としてもらえます。こちらは2018年まで3月末と9月末の優待でしたが、今年から4月末と10月末の優待に変更されています。4月、10月の株主優待は実施している会社が少ないので貴重です。チャートをみると権利月の前月である8月から9月の権利日前までほぼ一貫して値上がりしています。途中8月29日には、同社の会計をめぐる不祥事も発生して、大きく下げましたが、結果的にはここが絶好の押し目になりました。不祥事による売り圧力よりも優待の買いパワーのほうが強かったことになります。こちらも1〜2ヶ月前、8月下旬から9月ころに買って、10月の権利日前に売却すればかなりの利益が取れました。ちなみに4月末と10月末の優待は、値上がりするタイミングが後ろにずれ込む癖がある傾向があります。これは、日本の会社の多くが3月末と9月末に決算があり、この時期に優待を実施します。すると、優待がほしい個人投資家は3月末と9月末の優待に目一杯資金を使ってしまい、4月末、10月末の優待まで手が回りません。そんな投資家たちが3月末、9月末の優待の権利確定をした後、売却し資金が確保されてあわてて4月末、10月末の優待を買うのではないかと推測できます。そうだとすると、優待権利確定当月に入ってから急騰する説明がつきます。

梅の花(7604)のチャート

梅の花(7604)のチャート

もう一つラックランド(9612)をご紹介します。こちらは食品、飲食等の店舗企画、設計、施工行う会社ですが、三陸の水産加工物をチョイスできる優待を実施しています。私も貰ったことがありますが、鮭の粕漬けやシメサバなど本当に美味しく、この優待なら人気が出るだろうなと感じました。この東北名産品の優待は6月末、12月末です。それでは今年6月の権利日前のチャートをみてみましょう。こちらは早くも4月から上昇しているのがわかります。先の銘柄と同じ様に1〜2ヶ月前から買って権利日前に売却すれば利益が取れます。

ラックランド(9612)のチャート

ラックランド(9612)のチャート

株主優待を実施している銘柄を権利日より一ヶ月以上前に買って権利日直前に売却すれば利益が上がるという例をみてきました。株主優待は全上場企業の三分の一を超える1400社以上が実施しています。もちろんどれを買っても上がるというわけではありません。それでは優待時期前に上がりやすい銘柄とはどんな銘柄なのでしょうか。まず優待内容が大事です。だれもが欲しくなるような優待なら、買い上げられることは容易に想像できます。今回紹介した居酒屋やレストランのような外食で使用できる券は人気がありそうです。特に梅の花のように少し高級な店でも、株主優待を使えば気軽に利用できます。外食産業は優待を実施している会社が多いので、いろいろ調べていると面白いと思います。同じ様な理由で人気があるのが宿泊券です。ホテルチェーンが主力の企業やグループ会社でホテルを持っている会社では、宿泊券や宿泊割引券を優待品として採用している場合があります。また、限定品やご当地特産品がもらえる優待も、人気があります。先に紹介したラックランドも東北のご当地特産品の優待でした。地方に本社がある企業の中には、そこの地方の特産品を用意している場合があります。なかなか手に入りにくいという珍しさもあって思わずほしくなるものがあります。株主優待を紹介する本は毎年出版されていますし、投資雑誌も定期的に株主優待の特集を組みます。それらを眺めて自分でも欲しくなるような優待があれば、トレードの候補銘柄にあげても良いのではないでしょうか。今回紹介した3つの銘柄には共通点があります。それは、比較的小型株であることと、非貸借銘柄(信用銘柄)であることです。時価総額が数千億を超えるような大型株ですと、個人投資家がいくら優待目当てに買っても、そうそうは上がりません。初めに言ったようにイベントドリブンは需給の変化が利益の源泉です。出来高が非常に大きい大型株では多少個人投資家が優待目的に買ったくらいでは、需給に変化を及ばさないのです。また非貸借銘柄であることから、制度信用を使ったクロス取引で優待を取ることができない銘柄になります。クロス取引で優待が取れないのなら、優待をもらうには買って保持するしかないわけです。もちろん小型株ゆえに、出来高が少なく売買しづらいという側面も持っています。一つの銘柄にそれほど多くの資金を振り向けることは難しいわけです。今回のような値上がりを狙ったトレードでは、優待を取るわけではないので必ずしも現物株を買う必要はありませんauカブコム証券では信用取引の手数料が完全無料なので、信用取引の買建てでもいいのです。

 イベントドリブンの世界は今回紹介した株主優待の制度を利用した売買以外にも、指数のリバランスを利用したトレードや公募増資に伴うトレード。昨今多くなってきているTOB(公開買い付け)、オリンピックなどの行事や天変地異に到るまでさまざまなイベントを利用したものがあります。拙著「イベントドリブントレード」(パンローリング)ではイベントドリブンの基礎から応用、検証の仕方までを紹介しています。イベントドリブンに興味が湧いた方は是非お読みください。

志摩力男氏

羽根英樹(はねひでき)氏 プロフィール


羽根英樹(はねひでき)
個別株や指数先物などサヤ取りやイベントトレードを中心に売買をする個人トレーダー。
1993年からコモディティ市場でサヤ取りを始める。2000年には、世界三大利殖のひとつとして『サヤ取り入門』を執筆し、それまでベールに包まれていた手法を具体的に明かすことにより中国など海外でも出版されるベストセラーとなる。
コモディティの出来高が減ってからは、サヤ取りの技術を応用し、リスク管理を徹底したトレードを実践している。トレード仲間とともにイベントトレードなどヘッジファンドが使っている戦略の研究に励み、着実に利益を積み重ねている。過去十年以上年間プラスを維持し続けている。

著書に『イベントドリブントレード入門 価格変動の要因分析から導く出口戦略』などがある。

http://www.tradersshop.com/bin/showprod?c=9784775991664

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