WTI原油再び20ドル割れ!原油の需給予測を読み解く WTI原油再び20ドル割れ!原油の需給予測を読み解く

WTI原油再び20ドル割れ!原油の需給予測を読み解く

4/15 原油価格(米WTI原油先物)が再び20ドル割れに

新型コロナウイルスの感染拡大による需要減少と3月6日の石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国の減産協議の決裂を受け、原油価格(米WTI原油先物)は3月に20ドルを一時割り込みました。しかし、その後4/12に石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国は日量970万バレルの減産という歴史的合意にいたりました。この減産合意を受け、一旦持ち直すかのような動きをしていた原油価格(米WTI原油先物)が4/15に再び20ドルを割り込んでまいりました。
消費者目線では恩恵があるように感じる原油安ですが、エネルギー関連企業の経営難や、産油国の資産売却に繋がる可能性もあり、金融市場では緊張感が高まっています。

世界の原油の需給動向を読み解く

原油価格は今後も下落を続けるのか、あるいは持ち直して回復に向かうのか。予測は難しいですが、カギは世界の原油の需給にあると考えています。
そこで今回はあらためて、原油の需給予測を読み解いていこうと思います。

米国エネルギー省資料を確認

米国エネルギー省が公表している「エネルギー見通し」を見ると世界の原油需給予測が確認できます。4/7にリリースされた資料によると5月までは10百万バレル/日以上需要が不足している状況が続き、8月までは供給が需要を上回り続けます。

米国エネルギー省:短期エネルギー見通し(2020年4月7日)

世界の原油生産量と需要の推移(月次)

予測は米国エネルギー省(4月7日)
出所:米国エネルギー省の資料を基に当社で作成

世界の原油需給

予測は米国エネルギー省(4月7日)
出所:米国エネルギー省の資料を基に当社で作成

原油需給ギャップ

予測は米国エネルギー省(4月7日)
出所:米国エネルギー省の資料を基に当社で作成

この資料は4/12に石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国が減産合意する前にリリースされたものであるため、減産合意を受け、供給は資料よりは減少するでしょう。しかし、それでも供給過剰の状況はただちには解消されません。

2020年は最大で9.3百万バレル/日の需要減少!?

さらに4/15市場にインパクトを与えたのは国際エネルギー機関(IEA)が公表した4月の石油市場レポートです。レポートでは2020年の石油需要は前年比9.3百万バレル/日減少すると予想されており、米国エネルギー省の見通しよりも悲観的なものとなっておりました。4月の需要は前年比で29百万バレル/日も落ち込み、その後5月も26百万バレル/日の大幅な落ち込みが予想されています。6月になると徐々に回復の動きが見え始める可能性も指摘していますが、下期半期の回復も緩やかで、12月の需要予測も前年比-2.7百万バレル/日にとどまります。いずれも米国エネルギー省よりも悲観的な需要予測を示したことで、WTI原油は再び20ドルを割り込む展開となりました。
一方で供給サイドは主要20カ国(G20)による減産などの協力も織り込み、5月の世界の石油供給量は12百万バレル/日減少すると分析しています。

IEA石油市場レポート-2020年4月

原油市場、今後の展開は?

一部投機的な動きも見られるものの、今後の原油価格を左右するのはやはり需給のバランスということになると思われます。需要サイドの問題は、新型コロナウイルスの感染拡大と、それに伴う経済の停滞がいつまで続くのかということになってしまいます。これは現状では予測困難ではないでしょうか。ただし、日々世界の感染者の推移はチェックウォッチしていくべきでしょう。収束の兆候が見て取れれば、原油市場にも資金が流れ込む可能性はあるかもしれません。
また、供給サイドでは、当面はさらなる協調減産はないのかもしれません。しかし、原油価格の低迷が続くと米国のシェールオイルが採算ラインを割り込み掘削リグの稼働数が減少する可能性があります。そうして需給が調整され落ち着きどころを探る展開になるのではと考えています。

次に米国エネルギー省が示しているWTI原油の価格の予測を見てみましょう。

WTI 原油価格の予想

予測は米国エネルギー省(4月7日)
出所:米国エネルギー省の資料を基に当社で作成

米国エネルギー省予想では4月、5月は20ドル近辺を推移し年後半に緩やかに価格が上昇するようです。もちろん、あくまで予想ですが、現状の厳しい環境を表しています。一部に期待されているようなV字回復とはいかないのかもしれません。

冒頭でも申し上げましたが、原油価格の低迷が続くとエネルギー関連企業の経営難や、産油国の資産売却に繋がる可能性もあり、場合によっては信用不安、金融システム不安に発展しかねません。引き続き原油市場の動向を注意深く探っていきたいと考えています。

カブヨム編集部

参考:原油に連動を目指すETF/ETN

INEXTFUNDSNOMURA原油インデックス連動型上場投信 (1699)
日本円換算したNOMURA原油ロングインデックスとの連動を目指すETFです。

NEXTNOTES日経・TOCOM原油ダブル・ブルETN (2038)
指数の変動率が、日経・東商取原油指数 の前日比変動率(%)の2倍となるように計算された、日経・東商取原油レバレッジ指数を連動対象とします。

NEXTNOTES日経・TOCOM原油ベアETN (2039)
指数の変動率が、日経・東商取原油指数の前日比変動率(%)の-1倍となるように計算された、日経・東商取原油インバース指数を連動対象とします。

WisdomTreeWTI原油上場投資信託 (1690)
コモディティ投資の際のベンチマークとして広く利用されている「Bloomberg Crude Oil Subindex」の総合商品指数 に連動する投資成果を目指すETFです。

WTI原油価格連動型上場投信 (1671)
円換算した「ニューヨーク商業取引所(NYMEX)におけるWTI原油先物の直近限月の清算値」との連動を目指すETFです。



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