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売買審査参考事例集

不公正取引とは

金融商品取引所では、有価証券の円滑な流通と公正な価格形成を確保するため一般の投資家に不測の損害をもたらすような行為や取引は不公正取引として金融商品取引法で禁止されています。禁止行為と認定された場合には、違反者に対する懲役刑や罰金刑が課せられる場合もございますので、対象となる行為を十分理解したうえで、お取引いただくことが必要です。

ご参考:対象となる法令・諸規則

  • 空売り規制(金融商品取引法162条、金融商品取引法施行令26条の2~4)
  • 相場操縦的行為(金融商品取引法159条)
  • インサイダー取引<内部者取引>(金融商品取引法166条、167条)

対象となる行為はどういうものか

金融商品取引法157条(不正行為の禁止)では、有価証券の売買その他の取引等の不公正取引を次のように定めています。
不正の手段、計画または技巧をなすこと。不正の手段とは、有価証券取引に限定して社会通念上不正と認められる一切の手段をいう。
有価証券の売買等を誘引する目的をもって、虚偽の相場を利用すること。
趣旨は、ご理解いただけると思いますが、実際にどのような注意を払えばいいのでしょうか。
実際の取引形態に基づき【売買審査参考事例集】にまとめていますので、お取引時の留意事項のご参考にしてください。また、取引形態ごとの不公正取引の名称や概要の詳細につきましては不公正取引についてをご覧ください。

売買審査参考事例集

空売り規制

概要

実質的に価格規制の対象となる51単元以上の信用新規建注文を分割(30単元で5回など)することで価格規制をうけることなく発注する行為

複数の証券会社を利用して発注する行為および資金の所有者が実質同一人である場合の家族口座や法人口座等を利用して発注する行為も含む

関係口座の具体例

「空売り価格規制」を潜脱する目的で、例えば次のような形態での意図的な分割発注

  • 他社口座を併用し、合計数量が51単元以上となる信用新規売
  • 家族口座等と同調し、合計数量が51単元以上となる信用新規売
  • 法人口座とその代表者(代理人)の個人口座等を利用し、合計数量が51単元以上となる信用新規売
事例1 お客さまは、A銘柄に対し200単元の信用新規売り注文を直近公表価格以下の指値で発注したところ、空売りの価格規制に抵触した注文であったため、注文が失効(無効)となりました。その後、50単元以下の株数を複数回の成行注文に分割し、発注を行い約定させました。当該お取引は、空売りの価格規制を潜脱する目的をもった意図的な分割発注と考え、お客さまへは注意喚起を行っております。
事例2 お客さまは、日々の売買代金が数10億円以上ある銘柄では株価への影響も軽微であろうと考え50単元以下の信用新規の成行売り注文を繰り返し発注し累計300単元約定させていました。流動性が高い銘柄であっても50単元以下での数量を繰り返し発注した場合などは、価格規制を潜脱する目的をもった意図的な分割発注とみなされることとなります。当該取引を行ったお客さまへは注意喚起を行っております。
事例3 お客さまは、A銘柄に対し信用新規売り注文を直近公表価格よりも高い指値で50単元を売り上がる形態で4回発注した後に、未約定であったことから全て引け成行に訂正を行い大引けで200単元約定させました。当該お取引は、空売りの価格規制を潜脱する目的をもった意図的な分割発注と考え、お客さまへは注意喚起を行っております。
事例4 お客さまは、空売りを行おうと考え寄前の気配を確認したところ売り注文が買い注文を上回り、「基準値」以下の気配となっている状況でした。
基準値500円に対し、売気配493円・買気配492円であったため価格規制を意識して493円から498円の指値で50単元以下に刻み合計300単元の発注を行いました。
当日の寄付価格は、基準値と同値である500円でした。しかし、寄前の基準値以下の信用新規売り注文は空売りの価格規制の対象となります。
また、300単元の空売りを分割して発注した事により、空売りの価格規制を潜脱する目的をもった注文と判断されることにもなります。お客さまへは注意喚起を行っております。
事例5 お客さまは、新株発行予定銘柄に対し値決め決定期間に指値で50単元の信用新規売り注文を売り上がる方法で発注していました。しかしながら、出来ず引成りの条件を付けたためザラバでは未約定の注文が大引けで50単元を大きく超過して約定することとなりました。このような場合でも、空売りの価格規制を潜脱する目的をもった意図的な分割発注とみなされる可能性があります。お客さまへは、注意喚起のうえで取引規制を行っております。

見せ玉

概要

  • 多量の発注および全量約定前の取消しまたは劣後する値段への訂正
  • 寄付前における多量の発注および取引開始接近時間帯における取消しまたは劣後する値段への訂正
  • 売(買)付け後における多量の買(売)未約定注文の取消しまたは劣後する値段への訂正
事例1 お客さまは、日々の出来高が100単元程度の銘柄に対し寄付前に100単元の買い注文を成行で発注した後で取消しを行う行為を複数回・複数日行なわれておりました。また、お客さまは、同一銘柄を既に大量保有されており投資目的は買い増しとのことでしたが、継続的に過大な数量の注文を発注後で寄付を待たずに取消しを行う行為は、結果として第三者の取引を誘引するおそれのある注文形態であると判断しお客さまへの注意喚起を行っております。
事例2 お客さまは、A銘柄に対し信用返済売り注文10単元と信用新規買い注文50単元を同一取引日に発注され信用返済売り注文の約定となった直後に信用新規買い注文の取消しを行いました。結果として、ご自身の売り注文を優位に約定するため他の取引参加者を誘引した可能性がある注文であると判断しお客さまへは注意喚起を行っております。
事例3 お客さまは、複数社を利用してA銘柄に対し、X社から基準値よりもやや高い指値で信用返済売り注文を発注、Y社から基準値で信用新規買い注文を大量に発注しました。結果A銘柄は高く寄付き信用返済売り注文が約定しましたが、約定直後に信用新規買い注文を取消しされていました。この行為は、他の取引参加者を誘引する目的があった可能性が高いと判断し、お客さまへは無期限の取引規制を行っております。
事例4

お客さまは、ポジションとしている銘柄の売却を、より有利な価格で行いたいと考え、予め直近公表価格より上値で売却注文を発注されました。
当該銘柄は流動性が低く、当日も板の薄い状況であった為、買い注文を発注し買い板を厚く見せようと考え、自身で発注した売り注文より、大きな株数の買い注文を発注したところ、思惑通り売り注文が約定となった為、買い注文を即座に取消しされました。この行為は、他の取引参加者に誤解を生じさせ取引を誘因した行為として注意喚起を行っております。

見せ玉事例

買上がり(売り崩し)

概要

  • 短時間で大幅な価格変動を伴う買(売)付
  • 1日(あるいは複数日に渡り)の取引において買(売)付を反復継続し価格を維持あるいは変動させる取引
事例1 お客さまは日々の出来高が100単元未満で流動性の低い銘柄に対し、一度の発注数量で10単元の成行買い注文を複数回発注されておりました。
1回の注文で2%程度の価格変動を与え、1日通しての価格変動は5%を超え、売買関与率は40%以上に達している状態でした。
当社は、当該取引に株価を上昇させる目的が無かったとしても、結果として継続的に株価を上昇させたことを重要視し、当該お客さまへは注意喚起を行っております。
事例2 お客さまは、前場に当日出来高の2割にあたる株数の買い注文を、複数回の発注により7%の株価上昇させた後、同日の後場から、保有株を複数回に分け売却し株価を7%下落させ価格形成に大きな影響を与えていました。この取引による市場及び他の取引参加者への影響を鑑み、お客さまへは注意喚起を行っております。
事例3

お客さまは、下記図のように売り注文が非常に薄い状況で、指値110円・20単元の買い注文を発注されました。下記図の板状況では、散発的に売り注文があり「特別気配」にはならずに、短時間の間に直近公表価格(100円)より10%の株価変動と引き起こしました。この場合、株価を意図的に高騰させる事を目的とした取引では無くとも株価操縦と見なされる懸念があります。
お客さまには注意喚起を行っております。流動性の低い銘柄は、売買代金が過小でも大きな株価変動となる可能性がありますので、発注の際には、直近公表価格及び売り板状況の再確認をお願いいたします。

買上がり(売り崩し)

事例4 お客さまは、既に保有しておられた銘柄を株価の下落局面で買い増しされていましたが、出来高が少ない流動性の低い銘柄であったため、発注形態が成行注文と直近価格より高い価格を指定する指値注文を複数回行うことで、株価を高騰させる結果となってしまいました。さらに、調査を行ったところ、買い注文の一部がご自身の売り注文にぶつかる対当取引も成立させており、最終的な出来高への関与率は60%程になっておりました。該当顧客には、再発の場合には取引規制対象にもなりうることを通知する注意喚起を行っております。

高(安)値形成

概要

  • 複数日に渡り注文を反復継続することにより高値(安値)を形成する取引
  • 注文数量の大小を問わない
事例1 お客さまは、日々の出来高に対する関与率は低い状況でありましたが、複数日に渡り当日高値及び高値近辺の約定を成立させていました。口座の状況を調査したところ、該当銘柄を信用新規買にて保有しており維持率も低い状況にありました。一部の取引では、終値を高く引けさせるような形態も散見されたため、信用取引の維持率を保全する目的があったと判断し注意喚起を行っております。注意喚起は注文の大小問わず株価操作の疑義が生じる事象が対象になります。
事例2 お客さまの1回の発注数量は大量ではありませんでしたが、複数日に渡り安値を更新させるような信用新規売りを発注されていました。また、日々の出来高に対する関与率では40%程になっていました。結果として、該当銘柄の株価下落に多大な影響を及ぼすこととなったため注意喚起を行っております。株価を操作する意図がなくとも、結果的に価格形成に影響があるお取引には、発注形態を改善いただく目的で注意喚起を行いました。

株価固定

概要

  • 株価の下支え(上昇阻止)の効果を持つ多量の注文(※)の発注
    <複数日に渡る取引も含む>
事例1 お客さまは、日々の出来高が100単元未満で流動性の低い銘柄に対し同一価格で500単元の買い注文を発注、複数日に渡って反復継続した結果、株価が指値価格以下にならない状態を継続しました。この注文数量は株価を固定させる目的があったとみなし、お客さまへは投資目的の確認と注意喚起を行っております。
事例2 お客さまは、流動性の低い低位株の取引で現値より低い価格帯に注文期限を長く設定して大量の注文を発注しておられました。この注文の影響で、株価は複数日に渡り一定価格を下回らない状況となっていました。お客さまの保有銘柄を調査したところ同じ銘柄の信用新規建を大量に保有しておられ発注価格を下回ると、信用取引の維持率が著しく低下し追証が発生する状況でした。このことより、お客さまの行為は株価を一定価格より下落させないための行為であると判断し注意喚起を行いました。
事例3 特定の同一銘柄を保有するお客さま3名で、保有銘柄に対する大量の買い注文を一定の指値価格で発注する行為を継続したため株価は指値価格より下落しない状態で推移いたしました。当該取引は、共謀して特定銘柄の発注を行い一定価格より株価が下落しない状況を作り出した可能性もあると判断されたことから、それぞれのお客さまへ投資目的の確認をおこなったうえで取引規制措置を行いました。
  • 多量の注文:市場売買高に比較して、影響力を与えるとみなされる数量および件数

終値関与

概要

  • 取引終了時間を含む特定の時間帯における発注<複数日に渡る取引を含む>
事例1 お客さまは、日々の出来高が50単元程度の銘柄に対し立会終了間際に成行買い注文を複数単元発注しました。結果として、終値近辺の株価を高騰させ終値にも影響を与えることとなりました。さらに、翌営業日も同様の注文を発注し終値に影響を与える注文形態が確認されました。株価の終値は、大きな経済的効果を持つことから、この取引形態には株価操縦懸念が生ずることとなりました。当該取引を行ったお客さまへは注意喚起を行っております。
事例2 お客さまは、継続的に引け指値注文を発注されお取引をされていましたが、一部銘柄においては直近価格より高い価格を指定することで終値を高くさせる結果となっていました。調査をおこなったところ、このお客さまは、該当の銘柄を過去に信用取引で買建されており評価損が出ている状態でした。当該取引は、信用取引の維持率を保全する目的があったと判断し注意喚起を行っております。
事例3 お客さまは、特定の銘柄を継続的に買付けられていましたが、複数日にわたり不出来引成で約定が成立することとなり終値を高騰させる結果となってしまいました。当該取引に終値を高くする目的が無かったとしても、結果として継続的に終値を高くしてしまう注文形態となってしまっていたため注意喚起の対象といたしました。有価証券の終値は、担保評価とか投資信託の基準価額等にも使用されており経済価値への影響が大きいものです。従って、取引終了時間間際の売買動向は「株価操作」の対象としても特に監視されています。立会終了間際に発注を行う際には、終値形成に影響を及ぼす発注形態とならない細心の注意が必要です。(発注条件が「引成・引け指値」や「不成」の場合も同様です。)

仮装、馴合い売買

概要

  • 同一顧客(実質的口座保有者を含む)で対当するクロス取引
  • 特定顧客間において対当取引が継続する状況
事例1 お客さまは、直近公表価格より高い値段で信用返済売り注文を発注した後、ご自身の注文で約定させる目的を持って信用新規買い注文の発注を行なわれました。
この結果、株価を上昇させた後、お客さまの返済売り注文と新規買い注文が対当しました。当該取引は、当該銘柄の出来高に対して30%以上の関与率となっており、他の取引参加者に対し誤解を与える可能性が高い仮装売買と判断し、お客さまへの注意喚起を行っております。
事例2 出来高を伴った株価上昇銘柄の審査において、複数のお客さまで、買上がり・終値関与・対当売買が複雑におこなわれているグループ取引の形態が確認されたため、該当口座へ投資目的・投資資金を確認したうえで全商品の新規取引停止措置を行いました。さらに、仮名・借名取引の疑いがある場合には、口座廃止をお伝えするケースもございます。
事例3 お客さまは、信用買建玉の返済期日が近づいたことで返済売りが必要な状況でした。お客さまは、決済損を少なくする目的で直近公表価格を大幅に上回る価格にて指値発注した後に、自ら成行きで信用新規買い注文を発注し対当売買を形成しました。同一日において、同様の取引形態を反復したため株価を高騰させることとなりました。この取引形態は、他の取引参加者に誤解を与え取引を誘因する可能性もあった為、厳重注意のうえで取引規制を行なっています。
事例4 複数のお客さまで共謀し、株価を高騰させる目的を持って当社のみならず複数の証券会社を利用し、買上がり・売り崩し形態を交えながら同一銘柄への発注を頻繁に繰り返した行為が確認されました。このような行為は、取引活況銘柄であるように見せかけ他の取引参加者を誤解または誘因する可能性が高いため新規のお取引を規制させていただいています。
事例5 お客さまは、直近公表価格より高い値段で信用返済買い注文を発注され、ご自身の取引(信用新規売り)を成立させていました。複数回にわたり同様の行為をおこなった結果、場中の株価は上昇し、さらに、引けにかけても同様の形態をおこなったため終値形成にも影響を与える結果になっていました。お客さまには、取引規制対象にもなりうることを注意喚起いたしております。この事例では、建玉(信用売り)の損益では株価が反対方向(株価がプラスで決済損の部分は拡大)へ向かう行為となり、必ずしも保有されるポジションの優位な方向に働かせようとした行為に見えませんが、市場の公正な価格形成に対し大きな影響を与えたことが注意喚起の対象になったものです。

インサイダー取引(内部者取引)

概要

インサイダー取引(内部者取引)の留意点に関しては、日本取引所グループの刊行物・パンフレットのホームページをご覧ください。

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